分かりにくいけれど面白いモノたち
パイロットの「エアステップ」はなぜ気持ちよく、長く書けるのか? “アガるシャーペン”の仕組み、開発者に聞く(2/6 ページ)
パイロットの「ドクター・グリップ」といえば、そのソフトな質感のグリップと太軸のおかげで、長時間の筆記でも疲れにくい上に、ペンを持ち替えずに芯を出せるフレフレ機構をノブノック式に次ぐくらいまでに定着させたロングセラー製品。太軸なのに売れた、日本では数少ない筆記具でもあるのだけれど、フレフレ機構は、その機構自体が重りを使うため、どうしても重くなるし、太軸が苦手な人も多いのは確か。私も、今回お話し頂いた多賀さんが開発に携われたザ・ドクター・グリップが大好きなのだが、日常的に使ったり持ち歩くには、やや大仰な感じがしていた。
「持ち替えずに芯が出せて、しかも細くて軽くて手に取りやすい価格のシャープペンシルが出来ないかというところから開発が始まりました。ただ、決まっていた条件はそれだけでしたので、自由度は高い一方で、ゼロから新しい構造や形を考えなければならず、多くの時間を要したため開発には5年ほどかかっています」と多賀さん。
ドクター・グリップはかなりの名作だし、売れてもいるからなのか、確かにここ10年くらいはパイロットから、あまり正統派のシャープペンシルの新製品はあまり発売されていない印象があった。
記憶に残っているのは、例えば、ペンの上下が対称になっているデザインが特徴的な「シンメトリー」(2007年発売、廃番)や、一定以上の筆圧が掛かると、チャック部分が上にスライドして負荷を吸収、同時に芯がガイドパイプの中に潜ることで芯折れを防ぐという独特な構造の「モーグルエアー」(2017年発売、廃番)など。個性的だが、どちらもユーザーを選ぶ製品のように思える。個人的には、どちらも好きなのだが、日常的な愛用品にはならなかった。
しかし、ドクター・グリップもそうだが、これらのような個性の強い製品を作るノウハウや、モーグルエアーのような新機構のアイデア(モーグルエアーは、新機構に加え、フレフレ機構も搭載した上で価格は500円だった)は社内に蓄積されていて、今回のエアステップの開発にも大いに役立っているという。
「とにかく、ドクターグリップとは企画コンセプトが重ならないことを目標にしていました。その中で、何らかの付加価値や新しさ、便利さも提供したいということを考えて、さまざまな機構を検討しました。その過程で、製品化されてこなかった複数の機構の中から、今回のコンセプトに最も合うと感じたのが、芯の先を紙に押し当てるだけで、ガイドパイプの長さ分の筆記が継続できる機構でした」と多賀さん。
フレフレ機構は、重くなるので使えない、自動芯繰り出し機構もコスト的に難しいという中で選択したという、エアステップの芯繰り出し機構は、実際に書いてみれば、その便利さが分かるのだけど、説明するとなると、これが中々難しい。まずは、筆記時の操作の手順から。
エアステップは尻軸にノックボタンはなく、クリップ部分を押し下げて芯を出す「クリップスライドノック式」を採用している。この操作は、「フリクションボール」や、多機能ペンを愛用している方には既にお馴染の操作だと思うが、シングルタイプのシャープペンシルでは、まだ珍しいかもしれない。ともあれ、クリップを押し下げるとペン先からパイプが出てくるので、もう一度押し下げてパイプの先に芯を露出させる。これで準備は完了。あとは、普通に書く。
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ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。
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