分かりにくいけれど面白いモノたち
パイロットの「エアステップ」はなぜ気持ちよく、長く書けるのか? “アガるシャーペン”の仕組み、開発者に聞く(5/6 ページ)
元々、何らかのコンセプトがあって始まった企画ではないため、どんな風に売るのが良いのか、全体のコンセプトをどんな風にまとめるかが、製品として販売するには重要になる。それを機能やデザインと平行する形で作っていくという、製品としてはかなり珍しい作り方をしているための苦労があるわけだ。
私が、このエアステップを気に入ったきっかけは、実はデザインというか、カラー・バリエーションであり、レジン製の軸部分とエラストマー製のグリップ部分の色が、異素材にも関わらず見事に合わせられていて、一体感のあるデザインになっていたことだった。しかもシャープペンシルなのに、尻軸にノックボタンがなく、ポップなカラーリングと合わせて、とても新鮮に見えたのだ。
「今回はデザイン上の大きな制約はなかったので、軸の太さや、グリップの形状など、一からアンケート調査や、試作を繰り返しながらイメージを固めていきました」と多賀さん。
形になっていくに連れて、細部の作り込みに凝り始めたというのが何とも面白いのだけど、グリップと軸と天冠のキャップ部分の軸を構成する3つのパーツの色を合わせることについては、徹底的に追い込んでいったのだという。実は、レジンの軸は光沢のある元素材に白いシールを巻いてマットな質感を実現している。
その上でエラストマーのグリップと色合わせをするわけで、何度もリテイクを繰り返したのだそうだ。出来上がった製品を見ると、色が統一された一体感がデザインのキーポイントになっているわけで、こだわるポイントを間違えていないことも、製品作りの重要なポイントなのだということが分かる。
「デザインの方向性が見えてきた段階でも、実はネーミングだけはなかなか決まらなかったんです。これは本当に苦労しました。あまりに良い案が出なかったので、文章講座のような講座まで受講したほどでした(笑)。海外での販売も視野に入れていたため、海外でも商品イメージが伝わりやすい商品名を検討する必要がありました。気に入った名前が見つかっても使えない、ということが何度もありました。そこで、最終的には二つ以上の単語を組み合わせることで独自性を出せるという傾向が見えてきて、その方向性を中心にネーミングを固めていきました」と多賀さん。
ネーミングについても学生さんへのアンケートを取ったのだけど、あまりにも漠然とした質問のため、回答もイメージを絞れないものが多かったらしい。そういう状態から、デザインや機能、もともとあった「軽さ」というテーマなどから、“軽快さ”や“気分が上がる筆記具”といったテーマが浮かび上がり、最終的に「エアステップ」という言葉が生まれた。
「商品名が決まったら、スニーカーやアメリカンなイメージが生まれて、製品のキャラクターを作ったり、そのキャラクターのステッカーを初回ロット限定で付けたり、エアステップの世界観でゲームを作ってサイトで遊べるようにしたりと、かなり攻めたプロモーション展開へと繋がりました。実は、限定色の『ケチャップレッド』と『マスタードイエロー』は、商品名が決まってから、そのイメージに合わせて、後から追加したんです」と多賀さん。
この限定色のケチャップレッドとマスタードイエローがとてもいい色というか、単なる赤や黄色ではない、明るいけれど、派手すぎない、今っぽい色合いで、売れ行きもとても好調。この2色、実は、ハンバーガー・ショップなどにあるケチャップとマスタードのボトルを実際に購入して、その色を参考にして作ったそうだ。そのボトルもパイロット本社の1階、ちょっとショールーム風になっているスペースに飾られていた。
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ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。
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