小寺信良のIT大作戦
「×」ボタンをタップしても消えない――「UI偽装広告」が壊すデジタル社会の常識(2/3 ページ)
OS・アプリ表示を偽装した広告
次の例は、広告には見えないかもしれない。
一見するとゲームアプリに対するアップデート画面のように見える。すでにアップデートは自動ダウンロード済みで、あとは更新するだけのように見える。
だが実際には、これ全体が広告画面である。質が悪いのは、この広告が出てくるのが、似たようなゲームの最中であるということだ。つまり現在プレイしているゲームがバージョンアップするかのように錯覚する。
ここの更新ボタンは実際にはボタン機能はなく、この画面全体が1つのリンクボタンとして機能し、別のゲームのインストール画面へと誘導される。この偽装UIのポイントは、アップデート画面なので、キャンセルボタンを提示しておらず、一方通行になっているのが疑われないことだ。そのためユーザーは、もう更新するしかないとして画面をタップする。実は広告を閉じるスキップボタンは、画面左上に小さく表示されている。
似たような例として、以下のようなパターンもある。
同様にアプリのアップデートを偽装する広告だが、こちらは選択肢として「はい」しか表示されていない。上記のアップデートの場合と違い、こちらは「古いバージョンはまもなく…」とあるので、まだ猶予があることを示している。にもかかわらず、「はい」しか選択肢を表示していない時点で、UIのガイドラインに違反している。「はい」というボタンを設置する場合は、「いいえ」また「キャンセル」のような選択肢を表示することが求められる。
次の例は、ニュース記事の途中に表示されるGoogle Adsenseの広告で、PDF版の有効期限切れを偽装したものだ。このニュースサイトはHTMLで書かれており、PDF版など存在しない。だが利用者は、「もしかしたら今PDFで見ているのかも」と錯覚する。
こちらは「更新する」と「キャンセル」ボタンが表示されており、一見するとOSからの公式なメッセージのように見える。だがこれも前出のパターン同様ただの1枚絵なので、どちらのボタンを押してもフィッシングサイトへ接続される。
存在しないアップデートを、システムメッセージであるかのように偽装する広告は、どのサイトやどのアプリ中で突然表示されても、違和感がない。システムのメッセージは、いつも割り込みで表示されるものだからだ。
また以前ならこうしたテキスト系の詐欺広告は、日本語がおかしいなどと言った特徴があり、見破ることができた。しかし今はAIによる日本語翻訳がかなり洗練されており、日本語の怪しさがなくなっている。AIの発達は、国外の詐欺グループが日本語で活動しやすくなるという弊害を生んでいるように思われる。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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