企業が広告を「早く、安全に、大量に」作るAI アドビの新ツールが向かう先は“代理店いらず”か(2/3 ページ)
「ワークフローを自動化する」とは
続いて紹介されたクリエイティブワークフローの自動化ツールの「Firefly Graphエンタープライズ版」と「WorkFlow Builder」は、ベースには同じ技術が使われているが、目的が違うといったツールだ。
Firefly Graphエンタープライズ版は、広告イメージなどを制作する際の作業を通して、再現性のあるワークフローを作るシステム、とでもいうものだ。元になるイメージから、さまざまなプロセスをノードとして配置し、それを線でつないでいくと、ワークフローが出来上がる。
例えば1枚の商品写真を起点ノードとして、生成AIを呼び出して別アングルの画像を生成させるノード、PhotoshopのAPIを呼び出して背景の差し替えや加工を行うノードなどをつないでいく。さらに参照画像から顔を引っ張ってきて製品を合わせ込む生成AIのノードへとつないでいく。
最終出力では、さまざまなアスペクト比の画像に切り出すノードを配置する。ノードは入れ子構造にできるので、例えばさまざまなアスペクト比への切り出しノードを、1つのノードにまとめることができる。さらに動画生成AIのノードへ接続して、動画にしていくといったことができる。
重要なのは、こうしたワークフローに再現性があることだ。例えば色違い、柄違いで同じイメージが欲しいといった場合、完成したイメージから加工・切り抜きして別商品の画像を貼るという作業では、完成度が低い。だがFirefly Graphエンタープライズ版では、起点ノードの商品を取り換えれば、同じワークフローを経た結果が再現できる。同じプロセスを最初の起点から再度自動で行うので、結果の品質が安定するというわけだ。
この、ノードをつないでいって加工プロセスを再現するという手法は、昨年10月のAdobe MAX 2025で紹介された「Project Graph」という機能がベースになっている。当初はクリエイター向けのツールとして想定されていたが、クリエイター向けよりも先にエンタープライズ向けに実用化された。
その理由としては、クリエイターの場合、支援が必要なのはオリジナルの表現へ向かうためのアイデア出しや試行錯誤するためのツールであり、完成したワークフローの再現性へのニーズは必ずしも高くないというところがある。むしろワークフローの再現が必要なのは、いったんOKが出た広告展開などで、バリエーションが必要になるケースだ。つまりクリエイターよりもあとに控えている現場なのである。
もちろん素材の変更に伴って多少の調整が必要になるだろうが、それは途中のノードをいじることで対応になる。例えばオリジナルは右向きだったが、バリエーションモデルは左向き、といった変更もできる。
WorkFlow Builderも、ノードをつないで作業をワークフロー化するという意味では、基本的にはFirefly Graphエンタープライズ版と同じだ。ただしこちらは、クリエイターやデザイナーではなく、マーケターが使うツールとなっている。
よって完成イメージの根本をいじることはできないが、それをマーケティング展開に必要なバリエーション、例えば上に載せる文字違いや色違い、縦レイアウト、横レイアウトなどのバリエーションを簡単に作ることができる。ユーザーはクリエイターではないので、細かいパラメーター調整などは存在せず、ある意味プリセット化されているノードをつないでいくというイメージだ。
ブランド戦略のブレを防ぐ
企業にとって、ブランドイメージは非常に重要な資産である。しかしブランドイメージは、容易に傷つきやすい。商品そものものに問題があった場合は別として、広告などのイメージが、「らしくない」として炎上するケースも増えている。
また露出が多くなればなるほど、さまざまな表現がブランドイメージに合致しているのかという判断もまた膨大になってくる。ブランド戦略がきちんと明文化・ルール化されていても、実際には水面下にある暗黙のルールに縛られることもあり、判断基準はより複雑になってきている。
こうした課題を支援するのがBland Intelligenceだ。これは、企業理念やブランドのガイドライン、過去のクリエイティブやレビューなどを学習させることで、そのブランド「らしさ」を定義し、暗黙知の割出しなども含めてブランドイメージを維持するためのツールだ。
機能としては3つに分かれている。「検証」では、構築されたブランドイメージの学習結果と照らし合わせて、新しいクリエイティブが合致しているかを判断する。違反している場合は、具体的にどの部分がどのように問題なのかを指摘してくれる。
「組み立て指示」は、クリエイティブの制作指示書を解釈し、文字や画像などをどのように組み合わせ、配置するべきなのかを生成AIに指示し、バリエーションを再構築する。
「予測」では、仮想のオーディエンスを想定して、実際のクリエイティブ公開前に反応を予測させる。特定の利用者層なども想定することができるほか、反応の理由なども提示してくれる。
企業にとっては、事前の炎上対策も重要だ。これに関しては、ブランドの文脈や認識基準をデータとして構造化・学習させることで、リスクとなる表現の検知や対応が可能であるとされている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
4
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
5
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
6
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
7
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
8
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
9
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
10
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR