つい見せたくなる延長コード、開発したのは東大阪の電線メーカー 3000万円の機械導入で思いを形に

 新たな「快適」や「便利」を届けたい、消費者と直接つながりたい……私たちが何げなく手にする製品には、作り手のさまざまな思いと、それを形に変えた確かな技術が込められている。大阪府が中小企業の創造力にあふれた自社製品を認定する「大阪製ブランド」を通じ、ものづくりへの思いと技術、そして情熱を紹介するこのシリーズ。第1回は「見せる延長コード」を取り上げる(堀川晶伸)

「Extension Cord」の「Cross」タイプ(川村寧撮影)

 丸みを帯びた十字形に艶消しの黒。工業製品独特の存在感と同時に、柔らかさも感じさせるデザインは眺めてあきることがない。

 スタイリッシュな延長コードを手掛けるのは、大阪府東大阪市の電線メーカー「大原電線」。50年以上にわたり「ビニルコード」と呼ばれる業務用電線を、主にOEM(相手先ブランドによる生産)で製造してきた。そんなメーカーが家庭でも使える独自のブランド製品を作りたい―と挑戦をスタートしたのは、2019年のことだった。

 「『下請け』ならではの苦労もあるし、商社と新しい電線を一緒に開発したけれど知的財産権が向こうに渡ってしまったことも。何か自分たちで(製品が)できればという気持ちがあった」と社長の大原豊一さん(75)は説明する。

「一歩先の何か」

 東大阪市が企業とデザイナーの協業を軸に、地域ブランドの創出を目指すプロジェクト「東大阪ファクトリーズ」に参加。そこで出会ったのが、MUJIをはじめ国内外の企業と協業するプロダクトデザイナーの鈴木元(げん)さんだった。

 「ここに来て、うちが作れるものを見てもらったんです。電線では一般の消費者に届かないけれど、電線とかけ離れたものを作るのもおかしい。『一歩先の何か』を話し合い、延長コードになりました」

 豊一さんの息子で専務の康行さん(42)は振り返る。大変だったのはそこから。コードはお手のものだが、コンセントに差し込む「タップ」の部分と、プラグを差し込む「タップ」の部分には全くノウハウがなかった。

 「その部分には法律で作った会社名を入れないといけない。製品の『顔』の部分に、他社の名前が入るのはつらいなと…」

 一念発起して3年末、溶解した樹脂を高圧で金型に注入して製品を形作る「射出成型機」を約3000万円をかけ導入。本格的に自社製造を開始した。

 目標は、従来の「隠す」ではなく「見せる」延長コードという逆転の発想。だが、そのためのデザインは「シンプルで美しい分、ごまかしがきかず作りにくいんです」(康行さん)。

 射出成型を成功させるには、注入する樹脂の量や温度、圧力などそれぞれ最適な条件を見つける必要がある。思うような艶消しの黒色で、傷がない製品を製造することができるようになるまでには、3年以上が必要だったという。

しなやかな情熱

 量産にこぎつけた「Extension Cord」はタップが十字の「Cross」タイプ。コード部分は1本0.12mmの銅線を112本使用している。0.18mmを50本使う通常の延長コードに比べ、柔らかく断線しにくいという。

 「正直、オーバースペックです」と苦笑する康行さん。製品は量産前の段階から注目を集め、グッドデザイン賞を受賞。25年度の「大阪製ブランド」の「ベストプロダクト」にも選ばれた。

「いろんな人に直接売れる製品があることに仲間もやりがいを感じているみたい。その気持ちが本業にもいい形で反映してると思います」(康行さん)。

 現在はタップがカップ状の「Rainproof」と、直方体の「Straight」の量産に向け、日々、試行を重ねている。

 「結局はものを作るのが好きなんですよ」と笑い合う2人。製品と同じぐらいシンプルでしなやかな情熱がここにはある。

手に取ると

 「Cross」は、0.5mが7920円(税込み)。1mや2mなど他の長さも販売されています。

 パッケージはシンプルですが「Extension Cord」などのロゴがスタイリッシュ。コードが予想以上にしなやかでしっとりと手になじみます。

 艶消しの黒色とともに、タップやプラグとコードが一体成型されている点も、高級感のポイント。プラグに差し込んだときの感触も心地よく「何度も改良しました」(康行さん)というのもうなずけます。

 ユーザーからは「送別会のプレゼントに購入しました。スマートなデザインで使い勝手が良い」「新入社員のご褒美にしたら本人のやる気につながった」などの声も寄せられているといい、実用性と同時に“所有欲”を満たす一本といえそうです。

大原電線

1968年に大原電線製造所として設立。90年7月に大原電線株式会社とし現在に至る。高品質の「ビニルコード」(電線)を専門に製造しているが、さまざまな断面形状や太さの電線を、小ロットから手掛ける柔軟な対応力で、取引先からの信頼が厚い。大阪府東大阪市川俣1丁目15番15号。公式サイトはhttp://oharadensen.com/、Extension Cordの公式サイトはhttps://ooharadensen.shop/

 「大阪製ブランド」は大阪府のものづくりのブランドイメージを向上させるため、府が平成24年からスタートした事業。中小企業の優れた技術に裏打ちされた創造力のある製品を知事が認定する。2025年度までに171製品を認定。イメージアップとともに、自社製品開発の機運促進にも貢献している。

工場で出荷を待つExtension Cord
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