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「高学力=ストレスに耐えられる」ではない 秀才が苦しむ一方、収入・満足度が高いのは…… 医学生・医師1000人超を分析

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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 ポーランドのグダニスク医科大学に所属する研究者が発表した論文「Why academic selection fails to protect against physician burnout: a brief research report from a 25-year longitudinal programme」は、医学部での成績や心理的特性と、卒業後の燃え尽き症候群(バーンアウト)や将来の生活の質などとの関連を分析した研究報告だ。

燃え尽き症候群になっている医師のイラスト(絵:おね)

 医学部への入学競争が世界的に激化しているにもかかわらず、医師の燃え尽き症候群は危機的な状況にある。医学界では長らく、厳しい学力選抜を突破できる学生であれば、過酷な医療現場のストレスにも耐えうる精神力を備えているはずだと考えられてきた。

 この研究では、1999年に入学した医学生320人を対象に、在学中の6年間にわたり心理尺度を測定し、卒業4年後に追跡調査を実施した。さらに、近年の医学生計900人(566人および334人の2グループの横断研究)のデータも統合・分析した。

 その結果、医学部での6年間の成績は、卒業後の医師国家試験の成績をある程度予測できた一方、将来の「キャリアへの満足度」「燃え尽き症候群のリスク」「生活の質」(QOL)のいずれについても、統計的に有意な予測力を示さなかった。

 長く充実した医師人生を送るために本当に重要だったのは、学力ではなく、入学時に測定されていた心理的特性だった。特に、困難な状況でも物事を前向きに理解し意味を見出す「首尾一貫感覚」(SOC)という特性は、卒業4年後のキャリア満足度の40%、一般的なウェルビーイングの88%を説明する強力な予測指標であった。

 また、ストレスへの対処力も、キャリア満足度の69%を予測した。

 卒業生は大きく分けて3つのグループに分類されたが、全体の32%を占め国家試験の成績が最も高かった「ブライト(秀才)型」は、一般的なウェルビーイングや生活満足度が最も低く、自己申告の収入も最低だった。

 対照的に、全体の40%を占めた「クレバー(賢明)型」は、学業成績こそトップではなかったものの、入学時の首尾一貫感覚のスコアが最も高く、問題解決型のストレス対処法を身につけていた。その結果、この賢明型のグループは燃え尽きリスクが最も低く、生活満足度や収入が最も高かった。

 なお、残る28%の「コミット(献身)型」はキャリア満足度は高いものの、燃え尽きスコアが最も高いという結果であった。

 また医学生334人を対象とした調査では、学生たちの一部の心理的資源が医学教育の過程で摩耗していく実態も数値として浮き彫りになった。基礎医学から臨床実習へと移行する4学年で学習関連ストレスがピークに達し、学びに対する満足度は学年が上がるにつれて低下していた。

 これらの数値は、現在の認知能力や学力に重きを置いた入試制度が、将来の燃え尽き症候群から医師を保護する役割を果たしていないことを示唆している。医師の燃え尽き症候群は個人の心の弱さではなく、現在の教育システムが生み出す構造的な職業上の健康被害であると指摘する。

Source and Image Credits: Walkiewicz M (2026) Why academic selection fails to protect against physician burnout: a brief research report from a 25-year longitudinal programme. Front. Public Health 14:1836438. doi: 10.3389/fpubh.2026.1836438

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山下(Seamless)
山下(Seamless)

2014年から幅広い分野の研究論文をピックアップして解説しているメディア「Seamless」(シームレス)を主宰している。

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