「mao-asada.jp」失効ドメイン問題、さくら田中社長「対処します」の意図は 同社に聞いた(3/3 ページ)

1社では変えられない、ドメインの「階層構造」

 そもそも、失効ドメインをさくらが取り扱わなかったとしても、価値のあるドメインは他社が取得してしまうため、「ドロップキャッチやオークションをしない」と1社が決めたとしても、失効ドメイン問題そのものを止める手段にはなり得ない。

 問題の背景には、複雑な業界構造がある。ドメインの世界は、複数のプレーヤーによる階層構造で成り立っている。頂点にいるのが、ドメイン全体のルールを調整するICANNだ。

 その下に、TLD(.jpや.comなど)ごとにデータベースを管理する「レジストリ」がいる(.jpならJPRS、.comなら米Verisignなど)。さらに、レジストリとユーザーの間で、ドメインの登録申請を受け付ける事業者があり、.jpドメインでは、さくらインターネットやGMOインターネットなどがこれにあたる。

ドメインの階層構造(さくらのWebサイトより)

 ドメインの登録を受け付ける1社が、「このドメインは販売すべきではない」とか、「この人には売らない」といった独自規制を設けられるかは、レジストリやICANNのルールや契約次第であり、「一事業者が勝手に判断できる領域ではない」(谷口さん)という。

 悪用防止についても、現状では通報を受けて違法コンテンツが確認された場合にドメインの利用を停止するという事後対応が基本だが、谷口さんは「同じことはGMOさんもやられていると思う」と述べ、悪用対策の水準は業界でおおむね共通だとの認識を示した。

.jpなら変えられる可能性も?

 ただ、今回問題になった「.jp」ドメインに限れば、.comなどのgTLDと異なり、改善の余地があると谷口さんは言う。.jpは日本の国別トップレベルドメイン(ccTLD)で、国内のレジストリであるJPRSが登録規則を定めているためだ。

 実際、現行の.jpドメインにも一部、厳格な審査が設けられているものがある。「co.jp」は登記情報の確認が必要で、「go.jp」は登録担当者への電話確認がなければ取得できない。そこで例えば、JPRSが「.jpの登録時に本人確認を必須にする」というルールを決めれば、そのルールで.jpが運用されることになる。

 一方で、審査を厳しくすれば自由度は下がる。誰でも手軽に取得できるという利便性とのトレードオフになるため、メリットだけとも言いがたい。さくらはJPRSとコミュニケーションしており、JPRSも今回の騒動は認識していると、谷口さんは明かす。

田中社長の投稿は「業界への問題提起」

 著名な失効ドメインの悪用は、何年も前から問題視されているが、複雑な業界構造もあり、対策は簡単ではなさそうだ。

 田中社長のXアカウントは、「当社の事業の話だけではなく、個人の思いも含めて発信する総合的なアカウント」であり、「特定の企業やサービスへの批判ではなく、業界全体への問題提起だった」と楾さんは説明する。

 その思いの根幹には「インターネットは面白い、楽しい」という原点があり、ドメインという公共基盤がフィッシングやなりすましに悪用される構造への危機感がある――というのがさくら側の説明だ。

 ただ、その思いが具体的なアクションに結びつくには、業界の階層構造の中で関係者との合意形成が必要になる。「一朝一夕にできるものではない」(楾さん)が現状のようだ。

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