“ドパガキ”がショート動画を止められない理由 fMRIを使って若者の脳活動を分析 中国チームが研究

ちょっと昔のInnovative Tech:

2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその番外編として“ちょっと昔”に発表された世界中の個性的な研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 中国の浙江大学などに所属する研究者らが2月に学術誌「NeuroImage」で発表した論文「Brain activity inhibition during Short Video Viewing: neurochemical insights」は、ショート動画視聴時における脳の「認知コントロール」機能の抑制と、脳内物質との関連性を分析した研究報告だ。

 日常的にショート動画を視聴する現代において、つい時間を忘れて見続けてしまう現象の背後にある脳のメカニズムが明らかになりつつある。

ショート動画視聴時の脳活動を調査した研究の概要

 脳には、目先の欲求を抑えて自身の行動を調整する認知コントロールという機能が備わっている。この機能の中核を担うのが、前帯状皮質背側部(dACC)と背外側前頭前野(dlPFC)と呼ばれる脳領域だ。

 これらの領域は通常、集中を要する課題に取り組む際に活性化するが、受動的で娯楽性の高いショート動画を見ているときには、この認知コントロール機能が抑制されてしまうのではないかという仮説のもと、今回の研究が実施された。

 成人56人(平均23歳)を対象としたこの研究では、fMRIを使った脳活動の測定と、脳内物質の濃度を測る技術(MRS計測)が用いられた。参加者にはMRI装置内で様々なジャンルのショート動画を自由に視聴してもらい、最後まで視聴した興味ある動画と、途中でスキップした興味ない動画を見ている際の脳の反応を比較した。

 その結果、参加者が興味ある動画を視聴して没入している際、dACCとdlPFCの両方で活動が低下することが確認された。一方、興味ない動画を視聴して途中でスキップした際には、dACCの活動は通常(安静時)のレベルを維持していた(dlPFCは安静時より有意に低い状態が続いていた)。

 これは、興味ある動画に夢中になっている状態では、脳が目の前の娯楽を効率よく処理して楽しむために、自制心や注意力を司るコントロール機能が休止していることが示唆される。

MRS計測の分析結果

 さらに、この脳のコントロール機能の低下度合いには、脳内の神経伝達物質である「グルタミン酸」の濃度が関係していることが判明した。安静時のdACCにおけるグルタミン酸(脳の働きを活発にする物質)の濃度が高い人ほど、興味ある動画を視聴している最中でもdACCの活動低下が弱く、コントロール機能が保たれやすい傾向が見られた。

 つまり、動画へのハマりやすさや自己制御の失いやすさには、単なる意志の強弱だけでなく、個人の脳内化学物質のバランスが影響していることが示唆している。

 また、興味ある動画を視聴している最中は、dACCとdlPFCのネットワーク的な結びつきが強まることも分かった。これは両領域が協調してコントロール機能を低下させ、動画への没入状態を作り出している可能性が考えられる。

Source and Image Credits: Hong, T., Su, C., Zhou, H., Geng, F., & Hu, Y. (2026). Brain activity inhibition during Short Video Viewing: neurochemical insights. NeuroImage, 327, 121722. https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2026.121722

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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。

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山下(Seamless)
山下(Seamless)

2014年から幅広い分野の研究論文をピックアップして解説しているメディア「Seamless」(シームレス)を主宰している。

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