たった1社、日本から「中国ロボット運動会」に挑んだGMO 新卒が率いたロボ開発、その舞台裏(2/2 ページ)
陸上部員の走りを、4000体のロボットで同時に学習
走り方の土台にしたのは、GMOインターネットグループ陸上部の選手の動きだ。モーションキャプチャーで記録した走行データをロボットの骨格に合わせて変換し、シミュレーター上に用意した約4000体のロボットに、GPUを使って並列に学習させた。
学習には、強化学習手法の一つである「PPO」を採用。ロボットにさまざまな動きを試させ、速度や安定性などに応じて評価を与えることで、走りを改善した。
ある程度走れるようになった段階で、人間の動作データを基に、動きをより自然に近づける「AMP」も組み合わせた。滝澤氏によると、「速さを追求しながら陸上選手らしいフォームも反映させるには、2つの手法をどの程度組み合わせるかの調整にノウハウが必要だった」という。
速く走るほど熱で止まる
5月ごろには、走行速度が秒速約5.5mに達し、前年大会の100m優勝タイムに迫る水準になった。しかし、当時は50mほど走るとモーターの制御回路が過熱し、安全装置が作動して停止。転倒する問題が起きていた。
チームは、速度を保ちながら発熱を抑えられるよう、走り方を調整。放熱板も自作し、熱を機体のアルミ部分に逃がす対策を施した。熱の問題を解消できたのは、8月前半に実施した最後の開発合宿だったという。ここでようやく、走り始めとほぼ同じペースを保ったまま400mを完走できるようになった。
転倒や機体への負荷による故障にも悩まされた。実機を使った検証では腰部のシャフトが折れることもあり、修理と調整を繰り返したという。
GoProを着けて競技場を走り、3000枚を学習
自律走行にも大量のデータが必要だった。開発メンバーが胸にGoProを着けて各地の陸上競技場を走り、画像を収集。3000枚の画像にレーンの位置などを示す情報を付け、画像認識モデルを学習させた。
路面への対応にも工夫を凝らした。練習では「ひとみん」に運動シューズを履かせていたが、競技場ごとに路面の摩擦が異なる上、シューズの足裏素材によっても条件が変わる。そこで、学習時の摩擦係数をランダムに変化させるとともに、シューズの素材に合わせて設定を調整し、さまざまな路面に対応できるようにしたという。
スタートは、人が合図を確認してボタンを押す方式を採用。その後は、ロボット自身がカメラ映像からレーンを検出し、進行方向を制御した。
400m走では、ロボットがトラックの反対側に回ると、スタート地点にいる開発者から姿が見えなくなった。滝澤氏は、カメラ映像で走行を確認できるまで「無事に帰ってくるのを祈るような状況だった」と振り返った。
汎用機で専用機に追いつけるか
質疑応答では、開発期間を延ばせば、汎用機でも走行専用機に迫れるのかとの質問が出た。滝澤氏によると、上位の大型機は冷却システムを備え、負荷の大きい部分のモーターを二重化するなど、走ることに特化した設計だった。現状ではハードウェアの差が大きく、汎用機でこれ以上順位を上げるのは難しいとの見方を示した。
一方、汎用機を限界近くまで動かす過程で、走行制御や自律走行、熱対策などの知見を得られたとして、「技術の蓄積という意味では、非常に得るものが大きかった」と説明した。
他チームのソフトウェアに関する質問もあった。滝澤氏は、走行専用機はどれも似た走り方をしており、メーカーが機体と走行用の制御モデルをセットで提供しているケースが多い印象だったと説明。そのため、機体や走り方そのものより、細かなパラメーター調整の違いが結果を左右していたとみている。
GMOは今後、大会で得た自律走行や画像認識、熱対策などの知見を、物流倉庫や工場、災害現場でのヒューマノイド活用に生かす考えだ。
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