旭化成ホームズの社内システムが地震で全停止……したらどうする? 同社グループが本当にやった災害訓練(3/3 ページ)

人員配分が焦点になった第2部

 続く第2部では「発災1カ月後の事業再開」をテーマに、事務局があらかじめ用意した復旧計画の妥当性を議論した。

 事務局が用意したのはおおまかに「まず既に建てた家の点検を進め、その上で施工の再開、営業活動の再開へ向かう」という計画だ。阪神・淡路大震災のころ、事業を展開する地域が被災した経験から「1日でも早く駆け付けた方が良い」という考えがあり、人員は初動である点検に割く方針を取っていた。しかし実際の議論では、対応の流れ自体に異論は出なかったものの、人員の配分を巡ってさまざまな意見が出た。

 先述の通り、社員も被災している可能性がある状況下では、全員がいつも通り動けるわけではない。下請けの大工も同じだ。限られた人数を点検に全て投じていいのか、営業活動が再開できた場合、どの程度振り分けるのか。旭化成ホームズだけでなく、リフォームや不動産も含めたグループ全体で、どこに何人を配置するのが最適か、議論が白熱したという。

 「点検に人を投下すること自体に異論はなかった。ただ、(本来は別の仕事をしていて、災害時のみ)点検に当たる人員が元々やっていた仕事はどうするのか。そのあたりの細部については、まだまだ検討の余地があることが分かった」(大杉さん)

“失敗させる訓練”にはならなかったが……

 第1部・第2部を通して複数の課題を洗い出せた今回の訓練。しかし大杉さんの評価は厳しい。ある程度の成功を前提とした訓練になり、想定外の出来事の対応に重きを置けなかったためだ。

 「『(今回)そうしなかった』と言った方がいいかもしれないが、想定外の出来事に対応する訓練には、あまりならなかった。それが課題とは思っている」

 仕掛ける側として、あえて失敗させるような訓練にも興味はあると大杉さん。ただし、大杉さんとしては“応用”が必要な訓練は時期尚早と考えているという。

 一方で、複数のグループ企業とその経営層を巻き込む訓練を継続できている点は評価する。その背景には、阪神・淡路大震災は経験した一方で、東日本大震災の対応は経験していない、という同社の事情がある。

 営業エリアが被災した阪神・淡路大震災では、人海戦術で社員が現地に入り、一軒ずつ訪問して対応した。この経験は今でも社内で共有されているというが、一方で東日本大震災は、千葉県などの一部を除いて同社の営業エリアから外れていたため、対応を経験しておらず、知見もない。

 その上で、これから起きるとされる首都直下型地震や南海トラフ地震は、阪神・淡路大震災で展開したような人海戦術では対応しきれないことも予想される。それでも企業として必要な対応ができるのか。その課題感がBCP(事業継続計画)につながっているという。

 「我々が強みだと思っているはずの人海戦術ではどうにもならないことが起きるかもしれない。そういう世界が見えているのであれば、その前提で訓練しておかなければならない」(大杉さん)

 訓練が経営層を巻き込む規模になったのは、トップダウンの判断が大きい。きっかけは、訓練開始当時に社長だった川畑文俊会長の実体験だ。川畑会長は東日本大震災当時、千葉・茨城エリアの営業本部長で、被害のあった千葉の事業所にいた。一時は混乱したが、整備したばかりのマニュアルを思い出して開いたところ、それに沿ってある程度対応できたという実体験があったという。その気づきから訓練の重要性に気付き、グループ経営層を巻き込む訓練を開始したという。

 一方、何度も大規模な訓練を行っているからこそ、得た知見の継承を重視したいと大杉さん。「人も入れ替わるし、1年経つと、結構忘れている。人が変わっても、会社としてある程度機能する状態にしていきたい」と展望する。8回目の訓練は、また条件を変えて行われる見込みだ。

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