「現場任せのAI活用」が失敗するこれだけの理由 経営層がすべき“頭の中”の言語化とは(2/4 ページ)

原因を現場の中に探しても、答えは出ない

 このように、現場主導のAI活用がうまくいかない理由を現場の中に探しても、答えは出てきません。

 ラクスルが5月末から6月にかけて、従業員2100人の企業に勤める300人を対象に実施した調査では、代表・役員がAIを全く使っていない企業の85.7%が、AI活用の方針も推進体制も持っていませんでした。一方、代表・役員がAIを積極活用している企業で方針と体制の両方を欠いていたのは4.0%でした。

 「経営とAIの距離が近ければ、企業にAI活用方針・体制が設けられる」といった因果が断定できる調査ではありませんが、方針と体制の有無がここまで分かれるという事実は重く見てよいと思います。

 ラクスルの調査対象は中小企業ですが、経営の無理解が活用を止める構図自体は、規模を問わず見えます。大企業においても、生成AIの全社展開を阻む壁として、従業員が業務への効果をイメージできていないこと、IT部門でツール導入自体が目的化していること、本番システム側の非機能要件という3点が挙げられています。いずれも、原因が現場の努力では動かせない領域にあります。

 さらに良くないのは、方針が空白のまま号令だけが下りてくるケースです。生成AI導入が目的化し、KPIが「AI導入」や「効率化」といった曖昧な言葉のまま現場に降りてくると、現場は解けない課題を渡されることになります。

 ツールを配っただけで現場から「精度が低くて使えない」という声が返ってくる状態も、同じ場所から生まれています。

 業務プロセスの再設計という観点でも同じことが言えます。現在の業務プロセスは人間にとって効率がよいように設計されています。例えば、書類をある程度ためてからまとめて処理するといった仕組みは、人間だから必要だったものです。

 AIが働くことを前提に設計し直すには、情シスやDX担当が業務プロセスそのものに手を入れる必要があります。部門をまたぐ設計変更は、現場の一担当者が着手できる範囲を超えています。

印刷する
SNSでシェア
SpecialPR

この記事の著者

久松 剛
久松 剛

合同会社エンジニアリングマネージメント社長。博士(慶應SFC、IT)。IT研究者から、ベンチャー企業・上場企業3社でのITエンジニア・部長職を経て独立。大手からスタートアップに至るまで常時複数社でITエンジニア新卒・中途採用や育成、研修、評価給与制度作成、組織再構築、広報、AX・DX・FDEチーム組成などを幅広く支援。

関連記事

こんなメディアも見られています

ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

メールマガジンを配信中
メールマガジンを配信中

国内外の業界動向、AIやクラウドなどの最新技術、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

いますぐご登録

本日の新着記事

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia NEWS SNS

X @itmedia_newsをフォロー

インフォメーション

ITmediaNEWSをフォロー

あなたにおすすめの記事PR