低解像度にHDRレンダリングすることで処理速度をかせぎ、通常レンダリング結果と重ねることで、レンダリング精度の低さを目立たなくするアプローチだ。
この処理系なら、Direct X 8世代プログラマブルピクセルシェーダ1.xで十分対応可能だが、シェーダの命令数制限やシェーダのパフォーマンスを考えると、結局Direct X 9世代プログラマブルピクセルシェーダ2.0でないと実装は厳しいといわれている。
Direct X 9世代のGPUでは様々な制限が取り払われると期待されていた。だが、せっかくの「Direct X 9の新技術」が、すべてのDirect X 9世代(といわれている)GPUで利用できないために、3Dゲーム開発サイドは実にに歯がゆい思いを強いられているのである。
「Direct X 9世代」「プログラマブルシェーダ2.0対応」と称されるGPUも、テクスチャフォーマットとレンダーターゲット(フレームバッファ)のサポートにばらつきがある状況を理解してもらえたと思う。
「たかがテクスチャとフレームバッファで何を大げさに」と言う声も聞こえてきそうだが、テクスチャとフレームバッファこそは3Dグラフィックスの大黒柱的存在であり、その重要性は無視できるものではない。
GeForce FXの誇るプログラマブルピクセルシェーダ2.0“+”は、「より高度な演算命令が使えて」「より長いシェーダが書ける」ものであり、たしかに「最新鋭の絵筆」であることは紛れもない事実である。しかし,「その絵筆を使って描くためのキャンバスや画用紙がサポートされていない」というのが,今の現状なのだ。
とはいえ,GeForce FXシリーズがビデオカードとして価値がないわけではない。サポートするデータタイプとしては、確かに「GeForce FXはDirect X 8世代GPU」かもしれないが,「最高速のDirect X 8世代GPU」であることに異議を申し立てる者はいないだろう。
今回の記事でも説明してきたように、現在,実際に出回っている3DゲームのほぼすべてがDirect X 8世代テクノロジーを利用するに留まっているわけであり,これを高速に動かせるGPUということであれば,その訴求力は決して小さくない(うがった見方をすれば「ユーザーの多いGeForce FXの影響で、3DゲームがDirect X 8世代テクノロジーに留まっている」といえるわけだが……)。
こうしてチェックしてみると、サポートするテクスチャとレンダーターゲットの観点に限って言えば、「RADEON9500〜9800以外はDirect X 8世代GPU」といってもいいだろう。少なくとも多くの3Dゲーム開発者はそう認識している。Direct X 9世代テクノロジーを活用した3Dゲームとしてその登場が待ち望まれている「DOOM III」と「Half-Life2」だが、すべてのDirect X 9世代GPUで動作させるために、実際に活用されている技術のほとんどがDirect X 8世代のものに留まると考えられている。
「Direct X 9世代の3Dゲームが、すべてのDirect X 9世代GPUで動作するために、Direct X 8世代技術の活用に留まる」というのはよく考えると変な話ではある。
さて,2004年3月にはドイツでCeBITが開催される。この会期中には次世代高速バスとして注目されるPCI-Expressが大々的に披露される予定だ。
このタイミングでATIとNVIDIAはPCI-Expressに対応した新世代GPUを発表することはほぼ間違いないとされている。当然Direct X 9対応になる予定で,プログラマブルシェーダ3.0仕様をサポートすることが有力視されている(念のために言っておくと,プログラマブルシェーダ3.0仕様は既にDirect X 9でサポート済みであり,ハードウェアの登場を待つのみになっている)。
さすがに、NVIDIAも現行GeForce FXアーキテクチャからはステップアップを図るはずなので,ATI、NVIDIA、両者のDirect X 9フィーチャーのサポート度合いの格差が縮まることを期待したいところだが……。
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