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Longhornのデビューは2007年に?

» 2004年04月02日 15時11分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Microsoftは4月1日、セキュリティ機能に焦点を当てたWindows XP Service Pack 2(SP2)の開発に集中していることから、次世代Windows「Longhorn」初のβ版リリースが2005年までずれ込む見通しだと明らかにした。

 同社は、2004年半ばにはLonghornのβ版を提供すると表明していた。しかし、多数のLonghorn担当開発者がWindows XP SP2の開発に割り当てられたため、β版の登場は2005年初めになる見通しだと同社の広報担当者は話している。

 同社Windows部門のリードプロダクトマネジャー、グレッグ・サリバン氏は「昨年、セキュリティ分野で起きた出来事を踏まえ、Windowsの開発作業を見直した。その上でLonghornの開発からリソースを割き、Windows XP SP2に回すことになった。これがLonghorn β版のスケジュールに若干の影響を与えた」と説明している。

 今年半ばまでにリリース予定のWindows XP SP2には 通常のバグ修正やアップデート以外にもいろいろと手が加えられている。MicrosoftはSP2で、「ネットワーク保護」「メモリ保護」「メール」「Webブラウジング」という4分野でのセキュリティを強化する目的でWindowsに大幅な変更を加えている。

 Microsoft会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏は昨年、「Windowsの新しいメジャーリリースになるLonghornは、Microsoftにとって『大きな賭け』だ」と語った(2003年7月の記事参照)。またLonghornが「大きな転換をもたらすリリース」になると表現、Windows 95以来最も重要なWindowsのリリースになるとしている。

 Longhornは、ソフト開発者には既に初披露されている(2003年10月の記事参照)。Microsoftは昨年10月のProfessional Developers Conference(PDC)で、Longhornの特別なプレビュー版をリリースした。サリバン氏によると、5月にシアトルで開かれるWindows Hardware Engineering Conference(WinHEC)では、開発者向けのアップデートされたプレビュー版が配布される。

 LonghornからWindows XP SP2の作業に開発者を割り振ったことでLonghorn β版のリリースが影響を受けることになったが、長期的に見ると影響はごくわずかだと同氏は主張している。

 「SP2提供に向けた最後の追い込みに入っている。(SP2開発に回った)開発者の一部は、既にLonghornの開発に戻っている。長期的な影響は大きくないと思う」(サリバン氏)

 Microsoftは昨年5月、Longhornを2005年中に正式リリースする考えを示したが、その後その公約を取り下げている。ゲイツ氏は今週、Longhornでは「期日に間に合わせたリリースが目的ではない」とし、Longhornの登場は2006年になるとの予測について「おそらく妥当な憶測」と述べている(3月30日の記事参照)。

 これまでにも、同社がリリース予定に間に合わなかったことはある。3月には、メジャーアップグレード版のデータベースソフト「SQL Server 2005」(コードネーム「Yukon」)と開発ツール「Visual Studio 2005」(コードネーム「Whidbey」)のリリース予定を2005年上半期に延期した。2004年下半期という先の予定から6カ月ほど遅れることになる。

 最近のスケジュールの遅れから考えると、2006年にLonghornを間に合わせるのは難しいのではないかとJupiter Researchの上級アナリスト、ジョー・ウィルコックス氏は指摘する。「YukonとWhidbeyをリリースするまでに、Longhorn開発作業をどれだけ本格的に進められるか分からない。これらの製品が出荷される時期になってLonghornのβ1の準備が整うことを考えると、2006年は難しい」

 MicrosoftはLonghornの開発を継続する中で、開発がとどまらないように一部の機能を外すかもしれない。サリバン氏は「一部の固有機能については、規模を縮小することになるかもしれない。しかし昨秋に披露したビジョンには今でも狂いは出ておらず、Longhornは転換的なリリースになるだろう」と話している。

 米バーモント州フェアファックス在住の独立系ソフト開発者、ジュリア・ラーマン氏は、β版リリースが遅れても自らの業務には影響はないとの見方を示す。「現在のような初期段階においては、Longhornでいろいろと試しておくべき人たちは、多分もうLonghornを入手済みだ。彼らはこれからもβ以前のバージョンを扱い続けるだろう。私も今は学ぶことが多く、常にLonghornを試したいという誘惑に抗しなくてはならない」と語った。

 Longhornは、新たなデータ保存方式、刷新されたグラフィックス、Webとの密接な結び付きを備えるセキュアなOSになるとうたわれている。同OSは3つのコンポーネントで構成され、アプリケーションやドライバが競合しないよう、セキュリティや技術などを含む「基本」レイヤーがその基盤となる。

 こうした基礎の上に、プレゼンテーションサブシステム「Avalon」、統合型ストレージシステム「WinFS」、通信技術「Indigo」が置かれる。MicrosoftはPDCで、Longhornについてさまざまな詳細情報を明らかにした。「PDCで示したビジョンを、われわれは提供する」とサリバン氏。

 MicrosoftはLonghornを提供する前に、Windows XPで新たなマーケティングを推進する見通し。このプランは「Windows XP Reloaded」というプロジェクト名で進められている。

 「(Windows XP Reloadedは)Windowsの暫定版ではなく、既に宣言済みの機能を提供する試みととらえるべきだ」とサリバン氏。同氏はXP Reloadedには、SP2やアップデート版のWindows Media Playerが含まれることになるだろうと述べた。

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