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IBM、管理ソフトメーカー買収で「製品の隙間を埋める」

» 2004年04月02日 19時15分 公開
[IDG Japan]
IDG

 IBMは4月1日、管理ソフトメーカーのCandleを買収する計画を発表した。IBMとCandleは、古くから提携を結び、時にはライバルにもなった間柄だ。

 1日に開かれた電話会見で、両社の幹部から買収計画が説明された。金銭的な買収条件は公表されていない。規制当局の審査を経て、6月までに買収完了の見通し。両社は買収完了まで別々に事業を継続する。

 1976年から技術提携を結んでいるIBMとCandleは、4カ月前から買収の可能性について検討し始めたとIBMのTivoli Software担当ジェネラルマネジャー、ロバート・ルブラン氏は明かしている。Candleのメインフレームシステム管理技術と分析技術(特にハイエンドのzSeriesでのパフォーマンス・可用性管理の専門知識)は、IBMが提供中の技術を補完するものになる。

 「エンド・トゥ・エンド技術の提供に当たって一切合切を用意できればいいが、それは当社にはできないことだ。顧客に向けてエンド・トゥ・エンド環境を提供するため、提携を続け、新技術を加えていく必要がある」とルブラン氏。同氏は、CandleのソフトをDB2、Lotus、Rational、Tivoli、WebSphereといったIBMの各ソフト部門に取り入れると言い添えた。

 「Candleが隙間を埋める場合もあれば、補完的な役割を果たし、さらに掘り下げた分析を提供できるようになるだろう」と同氏。

 競争が激化する一方の市場に置かれているCandleにとって、今回の買収は残された2つの選択肢のうち、良い方を選んだように思われる。Candleの社長兼COO(最高執行責任者)のアンディ・ムリンス氏は、市場環境と技術バイヤーの姿勢が変わったために、同社には大幅な成長が見込めるプランに着手するか、ほかの企業に買収されるか、どちらかを選ばなくてはならなかったと語る。

 ムリンス氏は次のように話している。「今日、バイヤーは環境全体にわたる総合ソリューションを提供するために、1社のベンダーで賄おうとしている。当社のポートフォリオを劇的に拡大するか、ポートフォリオをの隙間を埋めてくれるパートナーと提携を結ぶ必要があると認識していた。IBMとの合併は、当社にとって最善の選択肢だった」

 1976年に設立されたCandleは、1980年代前半にメインフレーム管理ソフトスイート「Omegamon」で一時代を築いた。同社は2002年にソフト「PathWAI」をポートフォリオに加えて製品ラインを拡大。同社によれば、PathWAIとコンサルティングパッケージは、Webサーバや、IBMのWebSphereをはじめとするミドルウェアインフラの設計、テスト、導入、管理といった面で顧客の役に立った。

 IBMとCandleが手を組めば、顧客をつなぎとめ、新規契約の獲得にもつながるだろう。Ptak, Noel & Associatesのジャスミン・ノエル社長によると、メインフレームシステム管理市場は成熟市場ではあるものの、「まだ収益を生み出す余地がある」。

 「競争は実に激しくなってきている。最終目標は可能な限り大きな市場シェアを獲得することだ。顧客を移行させるコストが法外に高額なため、競合企業を買収することが容易になってきている」(ノエル氏)

 大手管理技術ベンダーの間でのデータセンター顧客の獲得合戦が激化するにつれて、こうした流れでの買収がもっと起きるだろう。主にIBMと張り合って市場シェアを維持する目的から、BMC Software、Computer Associates Internationalのような企業がCompuware、Heroix、ASGなどの定評ある企業の買収に乗り出す可能性もあるとノエル氏。

 しかしIBMによるCandle買収には、マイナス面もあるだろう。Candle製品とはTivoli Softwareが一番直接的な競合関係にあり、提供する製品にもかなり重なる部分がある。

 ノエル氏は次のように指摘している。「IBMのTivoli部門とCandleの間に対立関係が生まれる可能性は高いと思う。製品に重なる部分が多く、どちらの製品が宣伝されるか不透明だ。明らかにIBMにとっては、買収期間中にOmegamonやPathWAIの顧客を失わないことが重要だ。つまりIBMは、Candle製品を廃止したり、Tivoli製品へのアップグレードを強いることはできない」

 IBMは3月、Trigo Technologiesを買収する計画を明らかにした(3月10日の記事参照)。IBMはTrigoのデータ同期ソフトで、WebSphereインテグレーションミドルウェアのポートフォリオを拡大する考えだ。

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