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未来より「今」が焦点のTechEd、Longhornの出番なし

» 2004年05月20日 14時26分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Microsoftは最近のイベントで2006年に登場予定の次期版Windows「Longhorn」を派手に宣伝しているが、来週サンディエゴで開催されるTechEdでは、同OSについてはほとんど触れず、現行製品やもうすぐリリースされる製品に焦点を絞る予定だ。

 昨年ロサンゼルスで開かれたProfessional Developers Conference(PDC)ではLonghornがテーマとなり、先日シアトルで開催されたWindows Hardware Engineering Conference(WinHEC)でも同OSに関するセッションが数多く行われた。それとは対照的に、今回のTechEdでは「今」に焦点を戻す。

 PDCは過剰宣伝に過ぎたと、土木建築会社LLI Technologiesの上級ソフト開発者デイブ・バーク氏は指摘する。「われわれが持っているのは、現在の技術を使って書かなくてはならない実在のアプリケーションだ。基本的にLonghornは大きなバックグラウンドノイズだ」

 そこまで大胆ではないが、Microsoftの上級プロダクトマネジャーのハーリー・シトナー氏は、TechEdは今提供されているソフトや、ごく近いうちに登場する次バージョンにもっとスポットを当てるとしている。「PDCは未来が中心になることが多く、TechEdは今がテーマになる」

 TechEdでLonghornの話題が出ないのは、Microsoftが顧客と自身にとって重要な問題に立ち返っている兆候だとJupiter Researchの上級アナリスト、ジョー・ウィルコックス氏は語る。

 「Longhornの派手な宣伝は、本当に重要なことから大きく注意をそらすこととなった。それは既存製品、特にWindows XPの採用を拡大することと、顧客にVisual Studio 2005やSQL Server 2005など、開発の終わりの段階にある製品への対応準備をさせることだ」(同氏)

 TechEdはMicrosoftが米国で年に1度開催する技術教育ユーザーカンファレンス。Microsoft製品をほぼ網羅する700以上のセッションが行われる。参加者は、Microsoft製品の利用方法やそのセキュリティ対策、最新版へのアップグレード方法、競合製品からの移行方法などを学ぶことができる。

 「TechEdは、顧客が仕事を成功させるために利用できる技術やツールを届ける場だ」とMicrosoftのシトナー氏。同氏によると、このイベントに登録した参加者は1万1000人を越え、チケットは完売。参加者のおよそ半分は開発者で、もう半分はIT専門職という。

 Microsoftはまた、TechEdでいくつかの製品を発表する見込み。ここ数年のセキュリティ重点策に合わせて、アプリケーションファイアウォール・Webキャッシング製品「Internet Security and Acceleration(ISA)Server 2004」を正式発表する。この製品の一般向け販売は7月に始まる予定。

 MicrosoftパートナーのCelestix Networksは、ISA Server 2004をベースにしたファイアウォール・VPN(バーチャルプライベートネットワーク)・Webキャッシングアプライアンスの発表を計画している。調査会社Gartnerは最近のリサーチノートで、ファイアウォールはサーバではなく、アプライアンスであるべきだとMicrosoftを批判している。Celestixの製品は、こうした懸念に対処するようだ。

 Microsoftはまた、Exchange 2003用のスパムフィルター「Intelligent Message Filter」(IMF)の詳細も明らかにすると見られる。同社は昨年IMFを発表したとき、このアドオンはExchangeのライセンスでSoftware Assuranceに加入している顧客だけが利用できると話していた。しかし一部の関係者は、同社はこれをすべてのExchange 2003ユーザーに提供すると予測している。

 またTechEd参加者は、MicrosoftのLinuxに対するスタンスについての話も聞ける。セッションの1つでは、ここ数年のWindowsとLinuxカーネルを比較する予定だ。Microsoftはセッション予定表に、Linux開発者はWindowsの高性能最適化の手法をいくつか「借用」しており、LinuxはWindowsに似てきていると記している。

 来週には、少なくともある意味では、Windowsも多少Linuxに近づくことになる。PolyServeがWindows用クラスタソフトの発表を予定しているからだ。これまでPolyServeはRed HatとSUSEに対してのみ、主力製品「Matrix Server」を提供していた。

 TechEdのセッションの多くは、開発ツール「Visual Studio 2005」やデータベースソフト「SQL Server 2005」など、近く登場する製品を扱ったものになる。これら製品はいずれも来年前半にリリースが予定されている。アジェンダには、向こう数カ月のうちに登場するWindows XP Service Pack(SP)2とOffice System 2003 SP1も載っている。

 かなり先の製品リリースから距離を置くのは正しいと、独立系ソフト開発者のジュリア・レルマン氏は語る。同氏は開発ツール、データベース、Tablet PC用ソフトの次期バージョンに関するセッションへの参加を予定しているという。

 昨年のPDCに参加した同氏は、「TechEdでLonghorn関連のセッションがあったとしても、これらのセッションを放り出して参加することはないだろう」と語る。「今使っている現行技術のスキルを高めることができ、もうすぐ登場する技術への先鞭を付けられる幅広い内容に期待している」

 TechEdでは、「System Center 2005」「Windows Update Services」(WUS)など、Microsoftの管理ソフトも披露される。System Centerは、「Microsoft Operations Manager(MOM)2005」と「Systems Management Server(SMS)2003」を組み合わせたもので、WUSはパッチ管理製品「Software Update Services」(SUS)の後継。System Center 2005とWUSは年内に登場の予定。

 参加者は「Biztalk Server 2004」「Speech Server 2004」「Office 2003」など、既存の製品についても知識を深めることができる。

 Microsoftは多くのセッションで、開発者と企業のIT部門スタッフはもっとうまく協力しなくてはならないというメッセージを打ち出す考えだ。アプリケーション開発者とITスタッフは優先するものが異なるため、別の言葉を話しているように見えることもよくあるとMicrosoftは述べている。

 「われわれはこれらの人々を協力させることに熱意を持っている」とMicrosoftのシトナー氏。同氏は、開発者とITスタッフはTechEdから帰った後で、このことを自分のブログにたくさん書いてくれると期待している。「Microsoftは開発者とITスタッフのことを総合的に考えられるということを、彼らはブログに書くだろう」と同氏。

 今年のTechEdのテーマはLLIのバーク氏の現在の関心に沿うものだが、それでも同氏は参加しないつもりだ。バーク氏が2001年のTechEdに参加したときには、.NETのリリースとタイミングが重なったため、同氏にとってもその雇い主にとっても重要なイベントとなったが、今年はそうではないと同氏は語る。

 「2001年以来、雇い主が私をTechEdに送るだけの納得のいく業務上の理由がない。来年のTechEdがVisual Studio 2005かSQL Server 2005のリリースと重なったら、ためらわずに参加するだろう。これら製品へ移行する上で大きな後押しになるからだ」(同氏)

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