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フォーカスの甘さが課題、2年目のCeBIT America

» 2004年05月28日 20時43分 公開
[IDG Japan]
IDG

 新たなハイテク展示会をゼロから立ち上げることは、難しいのだろう。企業向けIT展示会CeBIT Americaの運営者に聞いてみればいい。2年目を迎えたCeBIT Americaは、今週Jacob Javits Convention Centerで開催され、5月27日に幕を閉じた。

 CeBIT Americaには、Hewlett-Packard(HP)、PeopleSoft、Siebel Systems、NEC、Microsoftなどの大手ITベンダー数社が出展したが、IBM、Sun Microsystems、SAP、Dell、Oracleなどはブースを構えず、不在が目立った。数少ない大手ベンダーを除く350の出展社は中小規模の企業で、その多くは消費者向け製品に重点を置き、企業のITに関する問題の答えを求める参加者にはうまく合わなかった。

 MP3再生機能とUSB接続を備える腕時計、アルコール感知機能付きのPDA、薄型ディスプレイ用の壁掛け用具、CPUやケース用の冷却ファンといった雑多なPCパーツなど、会場には場違いに見える製品も展示されていた。

 来場者も、企業向けのIT展示会で期待されるような層ではなかった。大企業の有力なIT利用者が訪れる代わりに、小規模企業の事業主、消費者、ITコンサルタント、特別なハイテク展示会に興味を持つ高校生などが入り混じっていたようだ。

 初日から苦しいスタートだった。ビジネスソフトベンダーSiebel Systemsのトーマス・シーベル会長が開幕基調講演の予定をキャンセルしたのだ。代わりにSiebel幹部が登場することになり、同社広報担当者は計画変更の理由について、最近の企業組織の再編に伴い、発言を控える時期にあるからだと話した。

 CeBIT Americaのプレジデント、マーク・ディニーン氏はシーベル氏のキャンセルに関して、「われわれがこの状況に満足していないと言うにとどめておこう」とコメントした。

 ディニーン氏は、参加ベンダーの一部が企業向けのIT展示会の出展企業としてふさわしくないことを認めたが、一から始めるには、軌道に乗せるためにやれることからやることもあると説明した。「展示会の立ち上げるに当たっては、試行錯誤しながら発展させることと、売上を出して親会社を幸せにすることのバランスが重要だ」と同氏。その目標は、最大級の最重要ITベンダーを展示会に招致することだが、口にするほど簡単なことではない。

 「全体として見ると、われわれは正しい流れに乗っている」と同氏。

 ディニーン氏によると、一部の主要ベンダーがぎりぎりまで出展を見合わせていたことも問題だ。企業が出展するか否かを決断する際に、どのベンダーが数カ月前から参加を表明しているかを参考にしているからだ。「市場が低迷して以来、皆が控えめだ。皆が待ちの姿勢を取っている」と同氏。

 さらに打撃をもたらしたのは、Computer Associates International(CA)主催の年次カンファレンスCA Worldや、MicrosoftのTechEdが同じ週に開催されたことだと同氏。企業には複数のイベントに参加する余剰資金がないため、こうしたイベントがCeBIT AmericaからたくさんのITバイヤーを奪い取った。CeBIT Americaは昨年は6月に開かれたが、スケジュールの問題からJavits Centerの管理者によって5月に回されたとディニーン氏は話している。

 独ハノーバーで毎春開かれている本家CeBITのようにもっと大規模なイベントにすると、米国のITバイヤーにとっては範囲が広すぎ、うまくいかないだろうと同氏。「来場者は焦点を絞ったイベントを求めている。1つの場として企業を招き、利用してもらおうと試みている」

 匿名希望のベンダー関係者たちは26日、現状ではこのイベントには失望していると話した。

 見込み顧客と知り合いたいと考えていたある大規模ソフトベンダーの広報担当者は、「がっかりしている」と話した。「比較的規模が小さな展示会だと予想していたが、こんなに小さいとは。ユーザーには会えず、目にするのは有益な来場者ではなく学生ばかりだ」

 また別の大手IT企業の広報担当者は、有力なバイヤーのみに入場を許可しているという運営側の発言に「誰でも入れているのに」と疑問を示した。ある程度のセールスリードはつかんだものの、大勢の雑多な来場者の中からそれを見つけ出すことは困難な作業だったという。「(この展示会の)一番の問題は、ターゲットを絞っていない点だ」

 さらに別のベンダー関係者は、もっと達観している。

 この人物はドイツで開かれる大規模な方のCeBITを引き合いに出し、「ここはハノーバーではない」と語る。「企業関係者は、欧州のCeBITで得たものを覚えている。CeBITという名前から(実情よりも)ずっと大きな成果につながることになると期待していたのだろう」

 この人物は26日までに、多数の大企業のバイヤーとブースで会えたわけではないが、このイベントが今年以降、良い方向に向かうだろうと期待を抱いている。自分の会社がブースのスペースを購入し、自社製品を展示するのは「いいギャンブルだ」と彼は言う。「すべての展示会がビジョンを持って始まるものだ。来年には違ったものになると思う」

 CeBIT Americaの来場者数はまだ公表されていないが、期待通り推定1万〜1万2000人だったとディニーン氏は明かしている。

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