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スパコンで前進するApple、だが一方で懐疑の声も

» 2004年06月22日 14時02分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Apple Computerは6月21日、高性能コンピューティング(HPC)の世界で存続していけることを証明するという目標に向けて一歩前進し、また一歩後退した。

 同社はこの日、米軍の契約業者であるColsaと、1566ノードのスーパーコンピュータを構築する契約を結んだことを明らかにした(関連記事参照)。Colsaによると、このスーパーコンピュータは1秒間に25兆回の演算が可能なものになる見込みという。

 このシステムは「MACH 5」(Multiple Advanced Computers for Hypersonic research)と呼ばれ、米陸軍のMissile Research, Development and Engineering Centerでの航空熱力学モデリング用に580万ドルかけて構築される。11月までに稼動に入る予定で、今ベンチマーク測定を行ったら、3億5000万ドルをかけた日本海洋科学技術センターの地球シミュレータのすぐ下にランクインするだろうとColsaは述べている。

 その一方で、昨年11月の世界最速スーパーコンピュータTOP500リストで3位に躍り出たバージニア工科大学のAppleベース1100ノードスーパーコンピュータは、21日に発表された最新リストから外れ、Appleの名はTOP500に載らなかった。

 Appleはこのバージニア工科大学のシステムで、初めて世界の上位スーパーコンピュータにランクインした。同大学はAppleの最新ラックマウントサーバ「Xserve G5」を基盤とした新しいスーパーコンピュータを構築中だったため、(最新のリストに合わせて)ベンチマーク結果を提出できなかったとAppleのサーバ・ストレージハード担当ディレクター、アレックス・グロスマン氏は説明している。

 同大学はこのスーパーコンピュータを構築してからわずか数カ月後の1月に、これをXserve G5に移行させる計画を発表。その後最初のPower Mac G5ベースのシステムを解体したとグロスマン氏。

 Xserve G5は今年に入って何度か出荷が遅れたが、同氏によると、バージニア工科大学が採用するデュアルプロセッサモデルは4月から大量に出荷されているという。

 「TOP500リストに載るような顧客がもっと増えると確信している」と同氏。

 そうした顧客の1社になると見られるのがColsaだ。同社は11月のリストに合わせて、MACH 5でTOP500のLinpackベンチマークを行うつもりだと、同社の執行副社長アントニー・ディリエンゾ氏は語る。同社には来週、第一陣として300台のデュアルプロセッサXserve G5システムが届けられるという。

 バージニア工科大学のシステムはメディアの注目を集めたが、一部のスーパーコンピュータ利用者は、Appleは同社のコンピュータがベンチマークだけでなく、高性能コンピューティングにおいてもっと多くのことができると証明しなくてはならないと指摘している。

 「私が見たのはLinpackベンチマークだけだ。それではコンピュータを買う理由にならない」と米パシフィック・ノースウェスト国立研究所の分子科学コンピューティング施設でコンピュータ運用マネジャーを務めるスコット・スタッドハム氏。「Appleのシステムの科学研究における効果は、いまだに実証されていない。それに最新のTOP500リストから消えたという事実は、私から見れば、最初のシステムが機能しなかったか、あるいはもっぱらLinpackのために構築されたということを物語っているように思える。Linpackはスーパーコンピュータの指標としては有用でない」

 Xserve G5はかなり有望視されているが、バージニア工科大学のシステムが数カ月間動いていないことから、Appleが顧客を新しいHPCシステムに移行させられるかどうかに疑問が持たれていると米オークリッジ国立研究所のコンピュータ科学・数学部門ディレクター、ジェフ・ニコルズ氏は語る。「第二弾のシステムを構築する間も最初のシステムを動かしておかなかったのはAppleのミスだ。3〜4カ月の間マシンが消えるのはまずいことだ」

 しかしながらColsaは、Xserve G5が同社の熱力学モデリングアプリケーションに適していると確信している。同社はAMDとIntelのプロセッサをベースにしたシステムも評価したが、「G5がわれわれのコードをより効率よく走らせるように思った」とディリエンゾ氏。

 Appleは11月のTOP500リストに少なくとも「少数の」システムをランクインさせるだろうと、同リストの維持に当たるコンピュータ科学者の1人、エーリッヒ・ストロマイヤー氏は予測している。「コミュニティーの関心は依然として高く、多数の人が届けてもらえるのなら(Xserve G5を)発注するつもりだ」

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