ThinkPadに「IBMの香りは残る」――日本IBMがPC事業売却について説明
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は13日、PC事業売却に関する記者説明会を開催した。説明に立った同社理事の向井宏之氏(PC&プリンティング事業担当)は、売却で懸念されるThinkPadのブランドイメージや品質の低下について、「今回の事業売却では開発も含めてIBMのPC部門が新会社に移る。そういった懸念は感じていない」と否定。「むしろマーケティングと開発のコミュニケーションが取りやすくなって、製品開発のスピードが速くなるのではないかと期待している」と売却によるプラス効果を強調した。
PC事業売却によるIBM日本法人への影響について向井氏は「日本IBMのPC関連部門を分割し、Lenovoの日本法人を設立する方向で話が進んでいる。営業やマーケティングを含め、日本IBMから新法人に移るのは600人程度。ThinkPadの開発を行っている大和事業所は、ThinkPad開発部門やそれに関係するエンジニアリング部門などの全員が移る予定だ」と説明した。顧客サービスなどの部門は日本IBM側に残るため、「新会社から日本IBMのサポート部隊に発注する形になる」(向井氏)。
LenovoはPCの売り上げの85%をコンシューマーやスモールビジネスが占めるが、日本のLenovo法人が今後コンシューマー向けのPC販売を強化するかどうかは未定。「それはLenovoが決めることになるだろう。ただ、新法人に移る日本IBMの営業部門にはコンシューマー向けの営業がいない。その点ですぐにコンシューマービジネスに乗り出すことは考えにくい」(向井氏)。従来からLenovoが製造・販売しているコンシューマープロダクトをLenovo日本法人が取り扱うかどうかについても、現時点では決まっていないという。
過去のIBMの事業売却や分割では、日立製作所に売却したHDD部門(日立グローバルストレージテクノロジーズ)や、独立させたプリンタ事業部門(レックスマーク)などがあるが、いずれもIBMの手を離れた後、“IBMカラー”がほとんどない企業になっている。
今回のPC事業売却でも、同様の可能性が指摘されているが、この点について向井氏は「(Lenovoが設立する)新会社はCEOにステファン・ウォード(現IBMシニアバイスプレジデント兼パーソナルシステムグループジェネラルマネージャー)が就任するほか、CFOなど要所はIBMのメンバーで占めている。本社が置かれるのもニューヨークのアーモンクで、まさにIBMの本拠地だ。(今回の場合)新会社になっても、IBMの香りは残るだろう」と述べ、不安の払拭に努めた。「今後少なくとも18カ月については、現在の製品計画を維持することも決まっている。開発拠点もIBMからラーレーと大和が移る。(その点でも)従来と変わらない」(向井氏)。
PC事業売却によってIBMはDellやHewlett-PackardなどLenovo以外のメーカーからPCを調達し、販売することが理論上は可能になる。しかしLenovoは最高で5年間はIBMロゴを使用する権利を得ていることに加え、IBMに優先的にPCを供給する“プリファードサプライヤー”になる。「少なくとも現時点では、そうしたことが起こるとは考えにくい」(同氏)。LenovoがIBMブランドを使えなくなる5年後以降については、「PCの世界で5年といえば、製品が3回転する。それだけ長い期間ということ。そこまで先のことは現時点では分からない」と向井氏は答えた。
また、今回の取引ではThinkPadやThinkVantageなど“Think”ブランドも併せてLenovoに譲渡された。これは旧IBM PC部門以外で製造したLenovoのPC製品や周辺機器、さらには携帯端末など同社が扱うPC以外の家電製品でもThinkブランドを使えることになる。この点については、「それはLenovo側のブランディング戦略に関わること。同社が今後考えていくことだろう」と応じ、IBM側では答えられないとした。
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