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堀江社長「ライブドア+ニッポン放送」でYahoo!追撃

» 2005年02月08日 21時30分 公開
[小林伸也 岡田有花,ITmedia]

 ニッポン放送株式の35%を取得したライブドアの堀江貴文社長は2月8日、都内で会見を開いて経緯やねらいについて説明した(関連記事参照)。堀江社長は「ニッポン放送と業務提携し、TVやラジオとネットの相乗効果を追求したい」と話し、ニッポン放送が所属するフジサンケイグループの集客力を生かし、同社サービスのユーザーをYahoo!JAPAN並みに増やしたいという。

「既存メディアとネットを融合したい」と堀江社長。「ニッポン放送」を「フジテレビ」と言い間違える一幕もあった

 「従来からメディア企業との業務提携は行ってきたが、単なる協業ではスピード感が足りない」(堀江社長)――ニッポン放送の経営に参画することでスピーディーな協業を目指す考えだとした。

 数あるメディアからニッポン放送を選んだのは「ニッポン放送はフジテレビジョン株式の約22.5%を保有しており、フジサンケイグループの中枢。グループ全体との事業シナジーを考えられる」(堀江社長)ため。ニッポン放送に事業提携も申し入れた。

 ライブドアは、2月7日までにニッポン放送株の5.4%を取得。8日に子会社を通じた時間外取引で約29.6%を取得した。取得金額は約700億円。株式は今後も買い増す考えだ。資金は、新たに発行する800億円の海外円建て転換社債型新株予約権付き社債などで調達する。

 株式の取得元は特定できないとしているが、今年1月時点で20%弱を保有していた村上世彰氏が率いる投資ファンド・M&Aコンサルティングからは取得していないという。ただ「村上氏は売る意思があると聞いている」(堀江社長)ため、今後は村上氏からの取得もありうる。

 フジテレビが21日までの予定で実施している株式公開買い付け(TOB)には応じない方針だ。「現時点での転売は損。長期保有する計画」(堀江社長)。

「ライブドア+ニッポン放送=Yahoo!」

 「ライブドアの使いやすいサービスと、フジサンケイグループの集客力を合わせれば、Yahoo!のような力を持てる」と堀江社長は力説する。同グループのTV局やラジオ局が運営するWebサイトに、ライブドアの提供するメールサービスやニュース、掲示板、ECなどを提供。ライブドアのユーザーベースを拡大しながら、各サイトへのリピート率も高める戦略だ。「ライブドアとニッポン放送の時価総額を足しても5000億円程度。これをヤフーと同等の規模・4兆円に高めたい」(堀江社長)。

 TV、ラジオの収益モデルも見直したい考え。「全チャンネル・全番組を録画できる『VAIO Type X』のようなハードが普及すれば、TVの見方は確実に変わる。ネットラジオの登場でラジオも変化する」(堀江社長)。広告に頼った従来のモデルは必ず崩れるとし、ネットを融合させた新サービスを提供すべきだとした。フジサンケイグループのポニーキャニオンともコンテンツ配信で提携したい考えを明らかにした。

「総合メディア企業」へ

 総合メディア企業への飛躍を目指すネット業界の風雲児はチャンスを逃さなかった。背景には、フジサンケイグループの歴史的な経緯から生じたいびつな資本関係がある。

 ニッポン放送は昨年フジテレビ株式を売却したため、持ち株比率は約32%から22.5%に低下したものの、フジテレビの筆頭株主にとどまっている。8日終値ベースの時価総額は、ニッポン放送の約2230億円に対しフジテレビが約5990億円。ニッポン放送への影響力を握れば、時価総額で3倍近いフジテレビにも間接的に影響を及ぼすことができる。売上高で約10倍のフジテレビをニッポン放送が傘下にしているという構図は、かねてよりフジテレビの経営リスクとして指摘されてきた。

 実際、ここ数年で村上ファンドや米国人投資家がニッポン放送の大株主として浮上。このためフジテレビは昨年9月にニッポン放送株を買い増し、ようやく約12.4%を保有する第2位株主になった。今年に入ってTOBによる完全子会社化を図った矢先のライブドアの登場で、グループ構想がつまづく可能性も出てきている。堀江社長はさらに株式を買い増す意向で、フジテレビはTOBの買い取り価格(1株当たり5950円)を引き上げざるを得ないとの観測が広がっている。

 ネットが普及した今でも既存のテレビ局が持つコンテンツ資産や影響力は巨大だが、その分厚い障壁が新参者を阻む。ソフトバンクの孫正義社長が1996年、デジタルTV向けコンテンツを目的としてテレビ朝日株式を豪Newsと取得したように、豊富な資金力で既存局を掌握したほうが早い。今を好機と勝負に出た堀江社長には、「ライブドアをYahoo!レベルに引き上げる」という発言以上の構想もありそうだ。

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