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スリランカの津波被害救援に一役買ったノートPCとGroove

» 2005年03月17日 17時03分 公開
[IDG Japan]
IDG

 2004年12月26日午前8時30分ごろ、津波の第一波がスリランカの海岸を襲ったとき、サンジャナ・ハットテュワ氏はスリランカの西海岸にあるコロンボから12キロメートル南の郊外の自宅にいた。午前10時半に電話がかかってくるまで、同氏は大惨事に全く気づかなかった。

 ハットテュワ氏はそれから2時間以内に、情報共有ネットワーク「Sri Lanka Tsunami Aid Portal」を立ち上げた。スリランカ政府および救援スタッフの活動を支援するためだ。同氏は自宅のノートPC、しかも貧弱なダイヤルアップネットワークを使って、このポータルを立ち上げたのだった。

 ハットテュワ氏は、Info-Shareという非政府組織(NGO)の戦略マネジャー兼CIO(最高情報責任者)である。Info-Shareは、20年余りにわたる民族対立で6万5000人以上の死者を出してきたスリランカにおいて、技術を利用して平和を実現することを目指した組織だ。

 このため、同NGOは既に平和活動の主要な利害関係者と人脈があり、以前からGroove Networks(2005年3月にMicrosoftが買収)の共同ワークスペースを使って、これらの関係者が情報を交換したり、共同作業を行ったりできるようにしていた(地理的/感情的/政治的な問題や、スリランカの激しい民族対立の歴史のため、これらの人々が物理的に一堂に会するのは困難なのである。こういった背景があったおかげで、ハットテュワ氏は津波関連情報の交換所としての役割を果たすワークスペースを立ち上げることにより、素早く行動に取りかかることができたのだ)。

 ブロードバンド回線は利用できず、また被害を免れた電話回線には電話をかける人が殺到したため、ハットテュワ氏はダイヤルアップ接続するのに25〜30回もトライしなければならなかった。

 「だがいったん接続してしまえば、情報を発信するのはとても簡単だった。インターネットというアーキテクチャを利用すれば、電話インフラの大部分がだめになっているときでも人々に情報を提供することができる」と同氏は話す。

 ハットテュワ氏は当初、このワークスペース用のデータとして、地図、マルチメディアファイル、記事、写真など約50Mバイト分の情報を自分のノートPCに保存した。2月の時点でワークスペース上の情報量は1Gバイトを超え、これらのデータはGrooveのサーバに置かれた。

 ハットテュワ氏は、自身の取り組みが救援活動に直接どの程度貢献したのか定かではないとしながらも、政府が津波の影響を評価し、被害者のニーズにどう対応すべきか判断する上でSri Lanka Tsunami Aid Portalが役立ったと考えている。

 そしてハットテュワ氏は、災害救助と平和活動の両方において技術が重要な役割を果たすと確信している。同氏によると、今回の津波は恐ろしい危機をもたらしたが、これまで想像もできなかったような方法で異なるコミュニティーを結び付け、スリランカ国民全体の将来を新たに切り開くプロセスを作成するための、またとない機会を与えてくれたかもしれないという。

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