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Microsoft幹部の言う「Linuxの24時間現象」とは?

» 2005年05月02日 12時00分 公開
[IDG Japan]
IDG

 最近、Microsoftのプラットフォーム担当グループ副社長、ジム・オールチン氏と会う機会を得た。Windowsの未来について同氏と話し合うのが目的だったが、ふたを開けてみれば、同氏のLinuxについての意見も、同じくらい興味深かった。

 Microsoftは、LinuxがWindowsサーバ事業の脅威でないふりをするのをとっくの昔にあきらめている。だが、普段は穏やかな話し方をするオールチン氏が、その午後の会話で最初にサーバ市場について触れたとき、非常にはっきりLinuxという言葉を口にしたのには、正直言って驚いた。

 「Linuxは、UNIXから受け継いだ血筋で勝者となるだろう。だが当社は満足だ。市場シェアを勝ち取っているのは当社なのだから」とオールチン氏。

 お分かりだろうか? Linuxをサーバ市場における手ごわいライバルと認めただけでなく、今やMicrosoftは実際、自らを負け犬と評しているのだ。

 Microsoftのかねてからの主張を信じるなら、オールチン氏の言葉は理にかなっている。Microsoftの主張では、Linuxの成長は、Windowsの顧客基盤を奪ってのものというより、AIXやHP-UX、SolarisなどのプロプライエタリUNIXの犠牲の上に成り立っている。Microsoftがサーバ市場でどれほどシェアを広げても、すべてのUNIXマシンがLinuxマシンにリプレースされるとしたら、サーバ市場におけるLinuxのシェアは実に大きなものになるだろう。

 しかし、その午後の私たちの話題の中心は、クライアント側にあった。クライアント市場に関しては、オールチン氏は寛大と言うには程遠く、報じられているデスクトップ市場でのLinuxの成長を、同氏の言うところの「Linuxの24時間現象」のせいにした。

 オールチン氏によれば、WindowsではなくLinuxが搭載された新しいPCを購入する客のほとんどは、もっぱら節約が目的だという。Linuxをプリインストールしたシステムを注文すれば、レジでWindowsのライセンス料を払わなくて済む。だが、こうした客はハードウェアを家に持ち帰るとすぐ、Linuxを消し、海賊版のWindowsをインストールするのだという――たいていは24時間以内に。

 オールチン氏は、このような形でデフォルトのOSをWindowsに置き換えるやり方を「フリッピング(裏返し)」と呼び、この行為はソフトの海賊行為がはびこるアジア市場で特に盛んだと指摘する。同氏によると中国では、デスクトップ用Linuxの出荷は実際減少している。その理由は? かつてLinuxプリインストールシステムを出荷していたメーカーが、今では無料か廉価版のDOSに切り替えつつあるのだ。客にとっては、DOSという基本OSで起動するシステムをフリップした方が、それに比べて複雑なLinuxシステムをフリップするより、ずっと簡単だからだ。

 私は、それはMicrosoftがまたMS-DOSのマーケティングを始めるいい機会かもしれませんねと言おうかと思ったが、やめておいた。

 確かに、オールチン氏の言うことにも一理ある。同氏が引き合いに出したような逸話は明らかに虫のいいものだが、デスクトップ市場でのLinuxの実際の成長を誇張するのは間違っている。客がMicrosoftに金を払うかどうかはさておき、Linux搭載機として出荷されたマシンで最終的にWindowsが走っているのだとすれば、それはLinuxが勝ち取ったシェアではない。

 勤務先でデスクトップLinuxを盛り上げようとしているのなら、以上のことを心に留めておくべきだ。急ぐ必要はない。今はまだ、Linuxは限られた、タイトに統合されたWebベース/プロダクティビティアプリケーションセットのユーザーに最適なシステムだ。日ごと状況は変わりつつあるが、今のところは、市場の現実を正確に反映していない統計値を繰り返し口にしても、Linuxを盛り上げる助けにはならない。

 ありがたいことに、データセンターの場合、決断はもっと簡単だ。Microsoftにおけるプラットフォームの第一人者自身が、サーバ側ではLinuxの時代が到来し好調だと言っているのだから。頭を悩ます必要などなさそうだ――どうでもいいOSを探しているのでない限りは。そういうOSがいいなら、Microsoftを買うこと。(そういうことですよね、ジム。)

(By Neil McAllister, InfoWorld US)

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