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DashboardとGoogle DNS問題に見る、Webサービスの「明と暗」

» 2005年05月16日 22時08分 公開
[Peter Coffee,eWEEK]
eWEEK

 「ウィジェット」と呼ばれる、Webサービスを利用したデータ追跡機能を特徴とするDashboard機能を伴ったAppleのOS X 10.4のデビュー、そしてそのわずか9日後に発生した数時間に及ぶ一部Googleサービスの停止ほど、皮肉な組み合わせはない。

 前者は、エンドユーザー環境に常時接続を「付加する」のではなく「組み込んだ」場合の違いを、デベロッパーカンファレンスでのデモだけでなく、実際の出荷製品として見せつけた。

 後者は、常時接続という言葉は矛盾していることをまざまざと思い出させてくれた。いずれにしても、私たちはテクノロジーの脆弱性と鼻をつきあわせて生きているのだ。

 私自身がOS X 10.4 Dashboardにこれほど感心するとは思っていなかった。結局は、かつてのDOSで登場した、元々ボーランドが開発したSideKick機能だと思っていた。SideKickは少し変わったTerminate and Stay Resident(TSR)ハックを利用し、フルには処理しきれない、疑似マルチタスキングをDOSで実現した。それでも人々は、インタラプト方式を活用した、この機能を気に入った。Dashboardは単にこのSidekickのグラフィックスを拡張しただけだと私は考えていた。

 期待した以上にDashboardが興味深いのは、少なくとも私が本当に有用だと思うウィジェットについては、バックエンドにはWebサービスを使い、フロントエンドではWeb標準を用いたオーサリングを採用している点だ。HTMLとCSSによって定義されたユーザーインタフェース、そしてJavaScriptで定義された動的な振る舞いによってウィジェットは比較的簡単に開発できる。またこれがUNIXベースのOS上で稼働しているおかげで、堅牢なオペレーションが実現する。何ともクールだ。

 だが夢中になり過ぎる前に、ネットワークの欠点というレンズを通じてDashboardの機能を見直すことが重要だろう。Sunが以前から使っている「The Network is the Computer(ネットワークこそがコンピュータだ)」というマントラを唱えるたびに、私はネットワークのように性質の悪い振る舞いをするコンピュータには金を払いたくない、と言い返したいのをぐっと我慢する。例えば、メモリアドレスが定められた時間に読み込み/書き込みオペレーションに応答しないことがあったり、あるいはデバイスが警告なしにネットワークに参加したり抜けたりするようなコンピュータは願い下げだ。

 ネットワークは不一致なものであり、変動するものだと私は実感している。悪意のない環境においてさえも。実際にあなたを狙う者がいれば、状況はさらに悪くなる。あなたの質問内容を知るだけで価値ある情報を不正入手してしまうMan-In-The-Middle(MITM)攻撃などはその一例だ。

 AppleのOS Xをめぐる派手な宣伝の大半はSpotlight機能についてのものだ。この機能はデータオブジェクトの複数の属性を統合検索し、その結果をアクセスしやすく複雑さが最小限に抑えられたユーザーインタフェースで表示する。おそらく、次世代ユーザーはこの機能に心から感謝することだろう。私は階層型ファイルシステムで育ってきたので、そうでない方式を使いこなすことはできないだろうが。

 私としては、クライアントOS環境としてのOS X 10.4により強い関心を持っている。Webをブラウザの四角いウィンドウを通じて見るものとしてではなく、自分が知りたい、あるいはしてみたいあらゆる事柄を提供してくれるデータと機能のソースとして扱っている。これは素晴らしいゴールだ。そのゴールに到達できるかどうかは、私たちに良質なネットをもたらしてくれるインフラ構築者だけでなく、今以上に見栄えのいいネットを構築してくれるだろうサービスプロバイダーとアプリケーション開発者の手に委ねられている。

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