参入は簡単だが維持が難しく、収益モデルも未確立――ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)という難しいビジネスに、また1社が名乗りを上げた。ネットを活用した音楽ファンドを販売するミュージックセキュリティーズだ。
同社は、投資家同士をつないでSNS化する計画。音楽仲間や投資家仲間を呼び込んでもらってファンドを盛り上げる。アーティストの試聴用ファイルも提供。人気が高ければ、原盤権のファンド化も計画する。
「投資家を増やしてファンドを盛り上げるには、SNSが効率的」――同社の小松真実代表取締役は話す。音楽ファンドの投資家は、友人に音楽をすすめたり、音楽について話し合うのが好きな人が多い。SNSで友人とつながる仕組みを作り、Blogや掲示板など音楽について語れる場を提供。知り合いを気軽に招待してもらい、ユーザーベースを広げる。現在の会員数は数千人だが、これを10万人に増やすのが目標だ。
投資商品の運用状況チェック用ページも兼ねることで、アクティブ率も高められそう。運用成績を確かめるついでにBlogやコミュニティなどのサービスを使ってもらう算段だ。また、アーティストにも参加してもらうなど独自のインセンティブで魅力を高める。
ファンド候補の曲を試聴してもらってユーザー投票にかけ、原盤権をファンド化する計画もある。自社レーベルで原盤権を管理し、許諾なしに試聴データを作成できる強みを生かす。
音楽関連のSNSは、昨年オープンした「recommuni」が代表的。ユーザーがDRMフリーの音楽を自由にアップロードできるのが売りで、著作権のある楽曲については事務局が権利者から許諾をとり、50円から200円程度で販売する仕組みだ。しかし、許諾のとれた楽曲は少なく、苦戦している状況だ。
「音楽とネットを組み合わせれば、資金調達に苦労しているミュージシャンを応援できる」――そう考えた小松代表取締役は2000年、大学卒業と同時に同社を設立。これまで19のファンドを組成した。
同社のファンドは一口1万円。アーティストを応援する感覚で気軽に投資できる。償還が終わったファンドの利回りは13.3%、8.5%、2.0%、0.1%。アイドル育成系など変わり種ファンドが苦戦する中、まずまずの成績をおさめている。
投資額によっては、1000枚程度の売り上げでも損益分岐点を越えるという。プロモーションを効率化するなどしてコストを抑えているほか、今年2月には申し込みから配当受け取りまでネットで可能にし、人件費や手間を抑えた(関連記事参照)。
CDの売り上げが伸びるほどアーティストの印税率が高まる仕組みにし、アーティストのやる気も引き出す。投資家は、投資したアーティストに強い思い入れをもつことが多く、ファン拡大にも一役買う。
同社が販売するのはCDのみで、音楽データのダウンロード販売は行っていない。CDアルバムのほうが利益率が高く、アーティストにも投資家にとってもトクだからだという。音楽ダウンロードが一般化すれば参入も考えるが「アーティストと投資家を応援する立場は崩さない」(小松代表取締役)。
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