見た目はアレゲだが、着てみると涼しくてやみつきになるファン付き長袖作業着「空調服」の本格販売が始まった。今年の新作はデザインを一新。サイズもSから5Lまで7種類そろえて老若男女にフル対応した。販売目標は年間の10万着と、昨年の10倍以上。7億円の売り上げを見込む。
来年の生産拡大に向けての準備も万端だ。建設中の中国工場は9月に完成。どんな服でも空調服化できるという「内装式」や、レインコート型、スーツ型なども試作中で、バリエーションは今後さらに増えそうだ。
空調服は、密閉性の高い長袖服の腰あたりに2基のファンを搭載した作業着。服の中に風を送って汗を気化し、気化熱で体を冷やす仕組みで、お風呂上がりの濡れた体に扇風機が心地よいのと同じ原理だ。服が体に張り付かないし、汗がすぐに蒸発するため不快感や汗くささもない(関連記事参照)。
暑苦しい見た目とは裏腹に、実際に着てみると驚くほど涼しい(関連記事参照)。風量は2段階に調節可能。寒くなればスイッチオフすればよく、クーラーと違って1人1人温度調節できるのもいい。単三形乾電池4本で約5時間使用でき、クーラーよりもずっと省エネだという。
空調服を開発した市ヶ谷弘司社長は、ソニー出身の技術者。自ら起業した会社・ピーシーツーピーでブラウン管関連製品を製造・販売するかたわら、温暖化問題やエネルギー問題を解決できる、“涼しい服”の研究を5年間続けてきた(関連記事参照)。
試行錯誤の末、昨年初めて試作品を発売(関連記事参照)。約7000着、8000万円(オプション電池含む)を売り上げた。
今年2月に社名を「空調服」に変更(関連記事参照)。4月からは製品版の販売を始めた。
製品版では、服地を中国メーカー製から日本メーカー製(中国産)に変更して強度やデザインを改良。Tシャツ型は廃止し、作業着・ブルゾン型に絞った。
首もとや袖口が少しあく構造にして空気の通りをよくしたり、ファンの取り外しを簡単にするなど、細かい改良も加えている。
従来からのポリエステル製に加え、熱源があって化学繊維服が着られない工場向けに、綿製も開発した。ラインアップは以下の通り。色はそれぞれ3種類から選べる。
タイプ | 素材 | 型番 | 楽天市場の価格(税込み) |
---|---|---|---|
長袖作業着 | ポリエステル100% | P-500N | 1万2600円 |
半袖作業着 | ポリエステル100% | P-500H | 1万2600円 |
長袖作業着 | 綿100% | M-500U | 1万2600円 |
長袖作業着 | 綿100%、2枚重ね | M-500A | 1万4700円 |
長袖ブルゾン | ポリエステル100% | P-500B | 1万2600円 |
4月から受注を始め、すでに約2000着、約3500万円を売り上げた。内訳は、個人が1000人、工場を持つ企業が300社ほど。サイズを7種類に増やし、色や形も改善したため、Mサイズ・グレーの作業着しかなかった昨年と比べ、試用後の追加受注率が飛躍的に高まったという。
しかし「まだ全体のニーズの3分の1くらいにしか応えられていない」と市ヶ谷社長は話す。工場では、すでに決まったデザインの制服を導入していることが多く、デザインが異なる空調服は導入できないためだ。
この問題を解決するため、どんなデザインの服でも空調服化できる「内装式」を試作した。ベスト状の小型空調服を普段着ている服に重ね、ファンの部分を切り取るだけ。市ヶ谷社長は、この「内装式」が空調服を爆発的に普及させる鍵になりうると期待する。
「内装式を改良していけば、どんな服にでも違和感なく合わせられる空調服が完成するだろう。オシャレな女子高生も空調服を着る時代が近いうちにきてほしい」(市ヶ谷社長)
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