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「“ADSLのアッカ”は終わります」 脱皮目指す中期計画

» 2005年08月09日 18時36分 公開
[小林伸也,ITmedia]

 アッカ・ネットワークスは8月9日、2007年度まで3カ年の中期計画を発表した。基幹事業の個人向けADSLサービスに加え、企業向け接続サービス、M2M(Machine to Machine)分野を成長の柱に育てて事業ポートフォリオを多様化し、2007年に売上高535億円、税引き前利益70億円を目指す。

photo 中期計画を発表する坂田社長

 同日発表した2005年6月中間期決算(単独)は、経常利益が前年同期比50.0%減の11億6200万円になった。787%の大幅増だった前年同期の反動から減益となったが、経費節減が奏功して当初予想の7億円を上回った。

 売上高は203億8800万円(前年同期比8.9%増)と増収。営業利益は12億9800万円(同46.0%減)、純利益は15億4500万円(同24.1%減)。

 6月末時点の個人向けADSLユーザーは、半年前から2.2万人増の129.4万人。

 通期予想は8月2日付けで修正しており、売上高は前回(5月13日)予想から7.3%減となる410億円に下方修正した。NTT回線使用料の値下がりや販促費の値引き処理などが要因。一方、経常利益は前回予想と変わらず25億8500万円となるため、経常利益率は向上する。純利益は同6.6%減の33億円。

中期計画を構成する3本柱

photo 中期計画の業績目標

 「“ADSLのアッカ”は終わります」──9日、都内で会見した坂田好男社長は、個人向けADSLのイメージが強い同社が目指す方向を端的に表現してみせた。成長の柱に掲げるのは(1)個人向けADSL、(2)企業向け接続サービス、(3)M2M──の3つだ。

 個人向けADSLをやめるわけではない。むしろ、約130万人のユーザーを抱える同事業は同社の屋台骨を支える基幹事業。前期の売上高386億円のうち、個人向け事業は334億円と86%を占めた。

 2006年度には純減も予想される成熟市場だが、低速かつ低価格なエントリー向けサービスと50M+などの高速サービスでニーズの両端をとらえつつ、有線ブロードネットワーク子会社との提携によるマンション向けFTTHも今期中にスタート。安定的な収入源としての位置付けは変わらない。

 企業向け接続サービスは成長分野。同社によると、企業向けのDSL-IP VPNでは約50%のトップシェアを占め、純増数は年間約1万回線と全IP VPNでもシェアは3割超。NTTコミュニケーションズ、KDDI、日本テレコム、パワードコムなど主要事業者をホールセール先としてカバーしているのが強みだ。

 今後は中小企業や地方企業への浸透が進むとみており、低価格サービスの拡充やSI事業者らとの関係強化を図っていく。中期計画では2007年に純増を1万5000回線に引き上げるなどし、企業向け事業の売上高を2004年の46億円から2007年に125億円に拡大するのが目標だ。

 これらに加え、同社が第3の柱として期待をかけるのがM2Mだ。産業機器やオフィス機器のメンテナンスや監視・テレメトリング、ホームセキュリティや情報家電など、文字通り機械−機械間を結ぶ通信サービスだ。

 同社の試算によると、M2Mの市場規模は回線事業だけで5300億円以上、システム構築事業なども含めれば1兆400億円以上。生活や産業の隅々までネットワークが拡大しつつあり、民生用から法人向けまで潜在市場は膨大だと見ている。

 M2Mサービスでは12Mbps ADSLの機器を再利用できるほか、個人向け事業などに比べ販促費も抑えられる。低コスト投資により限界利益は高くでき、収益性も高いと踏んでいる。同事業の今期売上高は1億円と緒に付いたばかりだが、2007年には75億円にまで育てたい考えだ。

「公開価格以上の株価を目指す」

 同社は今中間期の3月4日、JASDAQに上場を果たした。だが公開価格の45万円に対し、株価は下落が続いている。9日は前場引け後に発表した中期計画を好感し、前日比1万2000円高(+3.96%)の31万5000円となったが、公開価格からは遠い。

 坂田社長は株価の低迷について「深刻な問題だと受け止めている」とした上で「具体的な話を出していく必要がある。実際の実績とIR活動が車輪の両輪」とし、公開価格以上の株価を目指していくと話したした。

 懸念材料だった累積損失は今期中に一掃する計画。2006年度には株主配当も行う方針だ。

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