オープンから1年5カ月となる8月1日にユーザー数100万人を突破したソーシャルネットワーキングサイト(SNS)「mixi」。ユーザー増加のペースは加速を続け、ログイン頻度も下がらない。「ユーザーの声を最も重視し、誰もが自然に使えるサイトを目指してきた」――運営元のイー・マーキュリー笠原健治社長は、成功の背景をこう語る。
mixiのユーザー層は、男女比、年齢層とも偏りが薄れてきた。スタート当初、ユーザー層の中心は20〜30代で、7割が男性だったが、女性比率は高まり、8月現在の男女比は56:44。年齢層も10代から60代以上まで広がってきた。ユーザーの7割が3日に1回はログインしているというアクティブ率の高さも、サービス開始当初から変わらない。「老若男女問わず、いろいろな価値観の人が、できるだけ自然に使ってもらえるサービスにしたい」
mixiの企画開発チームが最も重視しているのがユーザーの声だ。mixi日記やブログ、機能要望コミュニティー、ニュースサイト――mixi関連の話題が載るサイトを巡回し、要望を吸い上げ、その都度話し合って解決する。
「毎日ユーザーさんと会ってます」――イー・マーキュリーの笠原健治社長は、mixi設立当初から積極的にユーザーイベントに足を運び、意見を聞いてきた。最近は、仕事で会う人もほとんどがmixiユーザー。要望を聞ける場も増えた。
ユーザー層拡大につれ、PC初心者のユーザーが増え、従来はなかったタイプの意見も出てきた。例えば、掲示板にコメントを書き込むと、自分の書き込みの隣に「削除」のチェックボックスが表示される機能。ネットに慣れた人には当たり前の機能だが、初心者ユーザーからは「なぜ自分の書き込みにだけ『削除』と表示されるのか、気持ち悪い」といった意見が頻繁に寄せられるという。「うまい解決策はまだ思い付かないが、近いうちに対応したい」
初心者に分かりやすい機能は、上級者には煩雑に映ることもある。誰もが違和感なく利用できるサービスを目指し、バランスの取り方に頭を悩ませる。
「不自然なこと、恣意的なことは極力したくない」――そう言って笠原社長は、広告や有料オプションの導入も慎重に進めてきた。「いいサービスを作れば、収益は自然に付いて来る」というのが持論。「ちゃんとしたサービスがない中で収益が上がってしまうと、その方が不安になる」と生真面目さをのぞかせる。
バナー広告を導入したのはオープンから半年経ってから。10枠ある広告枠は常に満杯という。ユーザー1人あたり1日平均50ページ閲覧するため、10種類広告が入っていても5回ずつ見る計算。広告の認知効果は高そうだ。
月額315円の有料オプションもヘビーユーザーの多くが利用しており、広告に次ぐ収入源になっている。当初は「ビジネスモデルが見えない」と言われてきたmixiだが、サービス開始から1年の今年3月に単月黒字化を達成。笠原社長は「まだまだ投資して、より良いサービスにしたい」と意気込む。早期に株式公開して資金を集め、投資を加速する計画だ。
今年に入って韓国系企業がSNSに次々と参入してきたほか、総務省がSNS参入を決めるなど、ライバルは増えつつある。「SNSは、人が多いところに人が集まっていくため、ユーザーが多いほど参入障壁が上がる。mixiと全く同じモデルで今から成功するのは難しいだろう」と笠原社長の自信は揺るがない。
不安がないわけではない。「大手ポータルがSNSを始めたり、すでに多くのユーザーを抱えているサイトがSNSの仕組みを取り入れれば、強力なライバルになるだろう」――笠原社長は後ろを少し気にしつつも、投資とサービス改善を続け、独走をゆるぎないものにする構えだ。
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