リコー自ら「ある種の伝説となったブランド」と語る「GR」がデジタルカメラになって帰ってきた。同社が満を持して発表した「GR DIGITAL」は、銀塩GRのシンボルでもあった高性能単焦点レンズを受け継ぎ、「長く使ってもらいたい」との思いを込めた同社の自信作だ。
35ミリフィルムパトローネを使いながら超薄型を実現したコンパクトカメラ「R1」をグレードアップし、「GR1」が世に出たのは1996年10月。優れた画質や28ミリという玄人好みの画角が受け、プロのサブカメラや編集者の七つ道具、アマチュアのスナップ機などとして高い評価を得て、当時の高級コンパクトブームの火付け役にもなった。
ファンを驚かせたのは2000年4月発売の「GR21」。コンパクト機の制約をクリアし、掟破りの広角21ミリレンズを搭載。広角マニアを喜ばせた。
GRの優れたレンズはスクリューマウント用に単品販売もされた。こしらえの良い付属ビューファインダーとともに、ライカの常用レンズとして使っている愛好家も多い。
ところがリコーは銀塩カメラ事業から撤退。GRシリーズも2001年9月発売の「GR1v」を最後に新製品は途絶えることになる。しかし今でも中古市場での人気は高く、中古カメラに詳しいリコー社員によると「GR21の新品元箱付きが、オークションで20万円超の値段が付いたことがある」という。
GR DIGITALはこうしたGRの血脈を受け継いだデジタルカメラだ。そしてGRと言えばとにかくレンズ。GR DIGITALが掲げた目標は「A3以上、四つ切り以上のプリントに耐えられる画質」「安定した、ばらつきのない画質」だ。
レンズは設計自由度を高めるため、沈胴時のコンパクトさと使用時の全長確保を両立できる工夫を施した。3群を収納時にボディ側にしまってしまう「リトラクティングレンズシステム」や第2レンズと第3レンズの間隔を収納時に短縮する工夫などがそれだ。
目指したのは優れたMTFや周辺まで均質な高画質、十分な周辺光量、ディストーション(歪曲収差)の少なさなど。同社が示したMTF曲線図などからは、こうした目標が十分に達成できたことがうかがえる。
単焦点を選んだ理由を、同社パーソナルメディアカンパニーの湯浅一弘ICS事業部長は「周辺まで解像できる高画質を目指した。まずは単焦点からGRを継承する」と説明。銀塩GRが28ミリに加え21ミリ版も登場したように、GR DIGITALも「今後の展開は未定だが、単発で終わらせる気はない。ユーザーの声を聞いて検討していきたい」と含みを持たせた。
一部ユーザーからはAPS-Cサイズなど大型CCDの採用も待望されていたが、GR DIGITALには1/1.8インチ有効813万画素を搭載した。ノイズを不安視するユーザーもいるが、「ISO 100なら、耐ノイズ性能はAPS-C一眼レフとの差は微小」(同社)としている。
新画像処理エンジンは「自然な色調」を基本とし、レンズ性能を生かせるよう、解像感を高めながらノイズも低減できる独自方式を導入している。「Caplio R3」に搭載された手ブレ補正は、手ブレの心配が少ないプロやハイアマチュアをターゲットユーザーとしたため、あえて搭載を見送った。
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