「誰もが安心して書き込める『まちBBS』を作りたかった」――熊本県八代市が自治体として国内で始めてSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)を取り入れた背景には、こんな思いがあった。
八代市のコミュニティーサイト「ごろっとやっちろ」は、市民同士が安心して情報交換できる場を目指して2003年4月にオープン。利用は一時落ち込んだが、昨年12月にSNS化して以来一気に盛り返した。ユーザー数は現在約1500人で、うち約8割が八代市民。市の人口は約14万人だから、約1%弱が利用している計算だ。
自治体が運営するコミュニティーサイトといえば「行政と住民の距離を縮める」「ネットで市民の声を吸い上げる」といった目的が語られがちだが、ごろっとやっちろは、市から何かを問いかけることもなければ、住民のコミュニケーションに市が介入することもない。「市民の方々に“馴れ合って”もらいたいんです」と、開発した八代市情報推進課の小林隆生さんは言う。
意見の吸い上げではなく“馴れ合い”を目指したのには理由がある。「掲示板から行政への意見を吸い上げるのは難しい」――2002年、市のサイトのリニューアル計画時。他自治体の掲示板やWebサイトなどを参考に検討した結果だった。
自治体の掲示板で政策に関する意見を募っても、主張が強い人ばかりが目立ってしまい、誰もが安心して発言できる場にするのは難しい。また、先行するどの自治体も、集めた意見を政策に反映するフローの確立に悩んでいるのが現状。専任の部署でも作れば対応できるかもしれないが、八代市にその余裕はなかった。
結局、市からの情報発信や行政への意見募集は市のWebサイトに集約。市のサイトにも掲示板は置かず、メールでの意見募集にとどめた。それとは別に、掲示板やコミュニティー機能を備えたサイトを作り、市民同士のコミュニケーションに生かしてもらいながら、市内の店舗の宣伝や市の広報媒体としても利用し、市の活性化につなげようとした。
2003年4月にオープンした初期のごろっとやっちろは、ユーザー同士がつながるSNS機能はなかったが、掲示板やコミュニティー機能を装備。書き込みが行われるたびに職員にメールがとどく仕組みを取り入れることで、市民同士が安全・自由にコミュニケーションしてもらえるサイトを目指した。
4月の公開当初は物珍しさからか多くのアクセスがあったが、ほどなくアクセスは激減。1年後にはほとんど使われなくなってしまった。
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