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SNS化で復活した自治体サイト「ごろっとやっちろ」(2/2 ページ)

» 2005年11月11日 14時32分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 なんとかユーザーを増やしたいと悩んでいたころ、小林さんはSNS「mixi」に招待され、参加してみて驚いた。ユーザーが自らのプロフィールを堂々と公開しており、活発に交流していたからだ。「それまで、ネットで個人情報をさらすなんてありえないと思っていました」

 mixiは、ユーザーがプロフィールや友人関係を公開しているため荒れにくいとされていた。会員はそれぞれの「マイページ」や日記を中心に活動し、「毎日ログインしないと不安」というヘビーユーザーも続出していた。

 「掲示板サイトだと、ログインしたときに見えるのは掲示板という公共の場所。書き込みへのハードルは高くなってしまいます。でもマイページや日記なら、誰にも気兼ねせず、好きなように書き換えられます」――前者だったごろっとやっちろを、後者のmixi型――SNSに変えようと決めた。「場所中心から人中心に変えようと思いました」

 mixiは、入庁間もないころの小林さんのある体験を思い起こさせた。「庁内LANを使って職員同士でファイル交換できるソフトを作ったら、それを利用するためだけに、みんなが自費でPCを購入し始めました」――1つのコミュニケーションツールが、高価なハード購入のドライバーにもなり得る。SNSも、ネットと縁が薄かった人がネットを活用し始めるきっかけになりそうだと感じていた。

SNS化で利用急増

 小林さんは早速、ごろっとやっちろのSNS化に着手。プロフィールを公開できるマイページを作成し、ユーザー同士がつながる仕組みや招待制を取り入れた。掲示板やコミュニティー機能とも連携させ、2004年12月に公開した。

 市民への参加呼びかけやPRは特にしていないが、約600人だったユーザーは約1500人まで増え、今も伸び続けている。月間1万程度だったページビューは、2万以上に増え、20程度だった月間書き込み数は150〜200に伸びた。SNS化以来、ひぼう中傷など問題のある書き込みも全くなくなったといい、ユーザー同士がゆるやかにつながる中で、モラルが保たれているようだ。

八代から全国へ

 小林さんは、ごろっとやっちろのシステムをオープンソース化した「open-gorotto」も公開。総務省が中心となって進めている地域SNS構想には、open-gorottoが利用されている。

 現在、open-gorottoの次期バージョンを開発中だ。目玉はSNS同士の連携機能。各地域のSNSがシームレスにつながり、情報共有できる。ユーザーの登録情報を各地域のサーバに分散して保存することで、管理の手間を細分化しながらユーザーベースを拡大できる。ある地域のサーバが落ちても別地域のサーバで利用できるよう、負荷分散の仕組みも取り入れた。

 課題だったUIやデザインも改善。Google Mapと連携し、日記に地図を貼り付けられるようにした。今後は絵や音楽を貼り付けられる機能を備え、文章が苦手な人にも使ってもらえるサイトにしたいという。

photo 小林さんは小学生のころからPCに親しみ、学生時代から自作ゲームや音源ドライバをシェアウェアとして公開していた

 「新しいことをやってるわけじゃないんです」――すでにある技術を選び、組み合わせるだけ。難しいことではないと、小林さんはさらりと言う。

 民間と競合するつもりもない。ネット上で地元の人が安全に交流できる仕組みを民間が作ってくれるなら、ごろっとやっちろをやめてもいいという。「みんな地元が好きだと思うんです。その思いを受け止められる受け皿を作ることが重要だと思います」

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