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「東大シャープラボ」誕生 フレキシブル技術を基礎研究

» 2005年11月30日 15時28分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 東京大学ナノエレクトロニクス連携研究センターとシャープは11月30日、有機半導体デバイスなどを活用したフレキシブルエレクトロニクスの共同研究を行う「東大シャープラボ」の本格稼働を12月に始めると発表した。東大駒場キャンパス(東京都文京区)のラボにシャープの研究員も常駐し、10〜20年先を見据えた基礎研究に取り組む。

photo 左から東大の先端科学技術研究センターの橋本和仁所長、ナノエレクトロニクス連携研究センター長の荒川泰彦教授、シャープの太田賢司専務

 昨年4月の国立大学の独立行政法人化以降、東大でも産学連携の動きが加速しているが、東大シャープラボは従来の産学連携とは一線を画すという。東大先端科学技術研究センターの橋本和仁所長は「大学の研究成果をただ企業に移転するのではなく、研究能力や研究プロセスといった基礎的な部分を移転していきたい」と狙い語り、シャープラボが新タイプの産学連携の先進例になると期待する。

 ラボ長を務めるナノエレクトロニクス連携研究センター長の荒川泰彦教授は、企業が基礎研究に力を注がなくなってきたと指摘。大学が企業と連携して基礎研究を行うことで、大学での基礎研究と企業での応用研究とのギャップを埋めたいと話す。

photo 15年前は企業も基礎研究を行う余裕があり、大学の基礎研究とのギャップは小さかったが、近年になって企業が基礎研究に力を注げなくなり、大学とのギャップが広がってきたと荒川教授は話す

 ラボの設置期間は2010年3月31日までの5年間。東大とシャープの研究員のほか、外部の大学などから募集した研究員10人程度が所属する。予算規模は非公開だが「大型の共同研究」としている。

 東大の知財や研究手法とシャープの技術や商品開発力を融合し、有機半導体デバイスや分子デバイスの基盤技術を活用したフレキシブルエレクトロニクスを研究する。具体的には、電荷移動度の高い有機トランジスタや、フレキシブルなICタグなどの研究を行う予定だが、研究成果の製品化は急がない。

 ラボは6月1日に設置したが、研究で生まれた知財の扱いをめぐって合意が遅れ、12月からの本格稼働となった。知財についてシャープの太田賢司専務は「きちんと蓄積しながら、世の中に役立つ知識は広く公開していきたい」とした。

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