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「ネット証券2.0」──GMOが新規参入

» 2006年04月13日 19時25分 公開
[ITmedia]

 GMOインターネットは4月13日、ネット専業証券会社を設立して5月12日から取引サービスを始めると発表した。業界最安レベルの手数料に加え、サービスAPIの公開や同社のコミュニティーサービスとの連携などにネット事業のノウハウを活用。初年度に10万口座の獲得と単月黒字化を目指す。

photo GMOインターネットの熊谷社長(右)と新会社の高島社長

 「GMOインターネット証券」を資本金4億8000万円で設立。4月24日から口座開設の申し込みを受け付け、5月12日から東証、大証、JASDAQの現物株式取引と制度信用取引のサービスを始める。今後、為替証拠金取引や先物・オプション取引なども順次追加する。

 現物株式の手数料は、1注文の約定代金が20万円以下の場合で105円(税込み)、300万円以下まで1050円(同)など5段階に設定。デイトレーダー向けに定額制も検討する。

 システム関連には数億円を投資したが、オープンソースソフトを活用するなどして安価にでき、その分手数料も安く設定できたという。

1注文当たりの約定代金 手数料(税込み)
〜20万円 105円
〜50万円 315円
〜100万円 525円
〜150万円 735円
〜300万円 1050円

 サービスにはGMOが培ってきたネット事業ノウハウを注ぎ込む。トレーディングツールは5種類を用意して順次公開する予定で、サービス開始時にリリースする「はっちゅう君」はタスクトレイ常駐型ソフト。機能を取引に絞ってシンプルな構成とした上、文字サイズを小さくするなどして表示面積を抑え、既に他社ツールなどを活用しているユーザーが既存環境を併用しながら使えるよう配慮した。

photo はっちゅう君。ツールは年度内に3種類を順次公開する予定

 トレーディング関連のWebサービスAPIを公開するのも特徴。ユーザーが自由にツールを作成し、独自ツールによる自動売買なども可能になる。ツールをオープンソース化し、コミュニティーの力を借りてブラッシュアップするなど、「Web2.0」的な方法論を積極的に取り入れていく。GMOグループのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やブログサービスなどとも連携し、GMOグループが抱えるネット会員2000万人を活用する。

photo 熊谷社長

 「ネット証券2.0時代の幕開け」──都内で発表会に臨んだGMOインターネットの熊谷正寿社長はこう宣言した。発表会場と同じビルに入居するGoogleを引き合いに出し、「Googleの特徴は、無料、機能を検索に特化したこと、APIの公開。同じ仕組みをネット証券にも導入する」とし、「ネットを知り尽くした会社だからできた。既存の証券会社との提携などで始めなかったのはこのためだ」と説明した。

 投資熱の高まりにつれ、株式のネット取引が盛んになったが、100万口座を突破した最大手のイー・トレード証券ら専業大手5社の寡占が進んでいる上、GMOが参入する5月には野村証券系のジョインベスト証券が業界最安レベルの手数料でサービスを開始するなど、競争も激化している。

 こうした市場に、GMOインターネット証券の高島秀行社長は「他社と同じサービスを安く運営し、その分手数料を安くし、差別化に技術的な仕組みを導入する」という「ごく普通の戦略」で挑む。熊谷社長は「ハードやソフトの価格が下がっていく『チープ革命』ではわれわれネット企業が優位性を発揮する」と意気込んでいる。

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