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ビジネスマンはゲーマーに感謝すべき?

» 2006年05月23日 18時21分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 最近のPCハードウェアのアップグレード曲線はかつてとは様相を異にしている。皆さんは、最先端技術を用いたフル装備のシステムを購入しても、2年もしないうちに、最新の主要アプリケーションを実行するにはパワー不足となってしまっていた時代を覚えているだろうか?

 わたしは確かに覚えている。だが、それほど懐かしい気持ちにはならない。皆さんの多くと同様、わたしも7年前に購入したPentium IIIシステムをいまだに電子メールやWeb閲覧、ワープロなど、大半の日常の用事に使えるという事実を嬉しく思っている。われわれは自宅のPCに関しては、古くなったシステムを各種の用途向けに取っておいたり、あるいはアップグレード時に、古いがまだ使えるシステムを友人や家族に譲ったりといったことができている。

 さらに重要なことには、新しいPCハードウェアにアップグレードする必要が特にないという事実のおかげで、多くの企業はここ最近のIT不況を乗り切ることができた。われわれは皆、この不況の間、平坦だったハードウェア曲線に感謝すべきだ。

 だが最近のハードウェアの変化を初期のころと比べると、やや意気消沈させられる。2006年現在、わたしはいまだに、全部とは言わないまでもほとんどの日常的なコンピュータ作業を1999年のPentium IIIシステムで済ませられる。これは、1999年に386システムを使っているようなものだ。386システムでは、1999年のソフトウェアはもちろんのこと、1995年のソフトウェアでさえ、うまく実行できなかったはずだ。

 このように、ハードウェアをそれほど積極的にアップグレードしなくてもいいという事実は、われわれにとってはありがたいことだった。とはいえ、業界全体にとってはそれほど良いことではなかったはずだ。PCの技術革新はひどく停滞している。われわれはおそらく、もっと旺盛なアップグレードサイクルによってもたらされていたであろう新製品や新たなメリットのチャンスを逃しているのだろう。

 IT業界の多くの問題と同様、この緩慢なハードウェアサイクルの責任を最も頻繁に問われるのはMicrosoftだ。多くの批評家や専門家は、より高性能なハードウェアへのアップグレードをユーザーに促すような新しいOSをMicrosoftが開発できずにいると指摘している。この意味では、現在開発中のWindows Vistaでさえ、それほど大きな役割は果たさないだろう。なぜなら、Windows Vistaがより高度なハードウェアを必要とする唯一の機能は、基本的には見た目に関するものだからだ。

 だが、こうした批判は完全な誤解だとわたしは思う。振り返ってみても、これまでMicrosoftがハードウェアのアップグレードを押し進めたことなどほとんどない。Microsoftが提供する新OSはどれも、数年前のシステムでも実行できるものばかりだった。わたしが覚えている限りでは、1990年代以降、ハードウェア要件が最も大幅に高められたのはWindows 95で、当時最高レベルの8Mバイト以上というメモリ要件が定められたときだ。

 わたしに言わせれば、PCハードウェアの最高レベルを常に高めているソフトウェア分野はただ1つ、ゲーム業界だ。現行世代のビジネスソフトウェアについては、ほとんどが3〜4年前のシステムでも十分に実行できるが、「ハーフライフ2」をプレイするとなると、最新のハードウェアを使う以外に選択肢はない。

 PCゲームは、ビデオゲーム機の後塵を拝しているように見えるかもしれない。ビデオゲーム機は収益性が非常に高い分野だ。だが内部者は、売上高は成功の尺度としては不十分だということを知っている。実際、「World of Warcraft」など、大人気のマルチプレイヤーオンラインゲームは主にPCにのみ対応している。

 最近では大手のIT各社も、PCベースのゲーム市場は活気があるだけでなく、集中的な注目に値するということを認識しつつあるようだ。例えば、Dellは先ごろAlienwareを買収しており、Microsoftも最近、PCゲーム分野に再度注力する方針を発表している。

 読者の中には、PCゲーム用のハードウェアと企業向けシステムにどのような関係があるのかと訝る向きもあるだろう。ご説明しよう。これは、トリクルダウン理論で考えればいいのだ。

 世界中のゲーマーたちが最高性能のグラフィックス機能を備えた超高額の装備を必要とすれば、それよりも若干性能の劣るハードウェアは価格が低くなる。これにより、PCサプライヤーは最先端よりもワンランクだけ劣る機器を企業向けに販売するようになる。

 そして、こうした強力なシステムを使用する企業が増えれば増えるほど、それを活用したプログラムを書こうとする開発者も増え、結果的には、新しいソフトウェアの革新につながる、というわけだ。

 つまりそうなれば、読者の皆さんも2010年には、2005年に買ったPentium 4システムではプログラムを実行できなくなり、新しいシステムに投資しなければならなくなるかもしれない。だが少なくとも、そのシステムで実行するに値するソフトウェアも提供されることになるだろう。

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