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2ちゃんねるもYouTubeもCGMネット時代の新潮流――CGMとは(1)(2/2 ページ)

» 2006年07月18日 08時18分 公開
[伊地知晋一,ITmedia]
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 例えば今、ネットの世界で起きているものとして

  • 消費者が生成する(日記や体験)の集積≒(ブログやSNS)・消費者が生成する(知恵)の集積≒(Q&Aサイト)
  • 消費者が生成する(値)の集積≒(比較サイト)
  • 消費者が生成する(レビュー)の集積≒(アマゾンやiTuneなどのEC)
  • 消費者が生成する(物の売買)の集積≒(オークション)
  • 消費者が生成する(プログラミング技術)の集積≒(オープンソース)
  • 消費者が生成する(思想や意思、希望)の集積≒(OhmyNewsによる市民運動)

――などがあり、これは単純にCGMという表現の域を超え、消費者が生成する(衆知)の集積≒(インターネット的な大きな力)と言い表すこができます。

 これらは以前からリアルな世界にも存在していましたが、集積の力が働きにくく、目に見える形での実感を得られなかったものです。インターネットとWeb2.0の概念の登場により、衆知の集積が発生し、インターネット的な大きな力がさまざまな方面に影響を及ぼしているのです。

 例の中にオープンソースを含めていますが、これもCGMの集積から発生したものと考えると、CGMはインターネット的な原理の根幹に当たる概念であることが分かります。

 これらのように「何を生成させて集積するか」によってその結果、発生するインターネット的な大きな力は異なり、個人や社会に与える恩恵や影響も変わってくるのです。

大切なのはそこに集まる人と衆知

 CGMの集積(衆知)を利用しようとする前に、そもそもどうやってそのCGMを集めれば良いのでしょう。集めることができなければ、衆知の利用も不可能であり、CGMのプラットフォームはユーザーにとって単に居ごこちの良い「巣」にしかなりません。

 その「巣」にどうやって仲間を集めるのか、集まった結果その巣と仲間達はどのような恩恵とデメリットを受けるのか、そして仲間達はどうすれば子孫(ネットワーク外部性により新たに集まるユーザー)を増やすことができるのか――これらを理解せずに「巣」に集まるユーザーと接するのと、知った上で接するのでは、CGMのプラットフォームを運営するにも、それを利用したビジネスのアイデアを考えるにも、大きく差が出てくるはずです。

 別の言い方をすると、どんなに優れたCGMのプラットフォームを用意したところで、この力学を理解せずにCGMと接したならば、目的を達成することは難しいでしょう。なぜなら、Web2.0の世界で本当に重要なことは、システムやWeb2.0的なプラットフォームではなく、そこに集まる人とそれらの知をどの方向に集積させるかであると考えるからです。

 これからWeb2.0とCGMの議論が進むに従い、衆知に方向性を持たせることの重要性が認知されていくでしょう。今は衆知が分散されてしまっているプラットフォームも、技術的、運営的なアプローチを用いて衆知をある方向へもって行き、集積を形成するものが増えていくと考えられます。ここから新しいビジネスも生まれてくる可能性も、未開拓な領域である分大いにあり得るでしょう。

 どんなことにも明と暗があるように、CGMも明るい未来への可能性と、その反面社会問題を引き起こす暗い未来への可能性を併せ持っています。しかし私はCGMがもたらす真に民主的な社会が到来することを信じています。

 インターネットが日本に初めてやってきたとき、その概念だけで夢を語った人が多かったと思います。私はこの時、「誰でも簡単に世界に向けて情報(CGM)発信をすることができる世界」(もちろん発信だけでなくインタラクティブではありますが)が来ると漠然と考えました。これは私のインターネットに対する考え方の原点で「Web0.0の世界観」と言っても良いものです。

 昔ロボットという概念を人々が知ったと同時期に「鉄腕アトム」が登場し、ロボットは空を飛び、言葉をしゃべり、正義の為に戦うことをイメージしました。しかしその当時の実際のロボットは、ごく単純なもので手足すらなく、「鉄腕アトム」とは程遠いものでした。

 しかし近年、ロボットには手足が付き、言葉を理解するものまで現れ、ロボットの概念が現れたころに人々が抱いたイメージが現実のものになる予感を得られるところまで来ました。

 インターネットの世界でも同様に「誰でも簡単に世界に向けて情報(CGM)発信をすることができる世界」が来ると思っていたのに、実際にはお金を払ってサーバを借りなければならない、プログラミングの知識がなければならない、情報が多すぎて見つけてもらえない、などの状況がありました。

 それから10年後の現在、Googleが現れ、ブログやSNSが認知され、利用されるようになり、私がイメージしていた「誰でも簡単に世界に向けて情報(CGM)発信をすることができる世界」がより進化し、実感できるようになりました。

 最近Web2.0のキーワードが登場しましたが、私の目から見た感覚は結局「Web0.0の世界観」に向って進化しているに過程にすぎないわけで、最終形のイメージはあくまでも「Web0.0の世界観」なのです。


伊地知晋一氏のプロフィール

 1996年、メール配信システムのシノックスの取締役として創業から参加。退職後、ユーティリティー系ソフトを販売するプロジーグループに入り、オンザエッヂ(現ライブドア)による買収と同時にオンザエッジに合流。

 2002年、オンザエッヂの旧ライブドア買収に伴い、無料プロバイダー・ライブドアの責任者として運営に当たる。2003年、ポータルタルサイト ライブドア立ち上げ。同時にスタートしたブログが国内最大のサービスに成長した。このほか、約2年半で50以上のネットサービスを立ち上げる。

 現在はライブドア社長室長 コーポレート担当。グループ会社全体のWeb戦略を推進している。


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