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アクセスは増えたが……“口コミメディア”の悩み

» 2006年06月27日 20時39分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など、ユーザーがコンテンツを作るメディア――CGM(Consumer Generated Media)――が注目を浴びている。CGM運営企業は、情報発信の場さえ用意すれば、ユーザーが自動的にコンテンツを増やしてくれる仕組み。コストをかけずに媒体を作れ、広告を貼り付けるだけで稼げる“おいしい”サイトととらえられることもあるが、ビジネスモデルはまだ発展途上だ。

 CGM型の人気サイト「価格.com」「はてなダイアリー」「@cosme」「COOKPAD」を運営する4企業の幹部が6月27日、都内で開かれたセミナーで、CGMが直面する課題について語った。

画像 会場には200人以上が詰めかけ、立ち見も出るほど盛況

 化粧品に関する口コミサイト「@cosme」は、設立から7年で累計口コミ件数約400万件、月間ページビュー1億5000万に成長し、化粧品口コミサイト最大手だ。しかし「サイト規模が倍になっても売り上げは倍にならない」と、運営するアイスタイルの吉松徹郎CEOは明かす。

 「売り上げ1兆円以上の化粧品市場で、当社の売り上げは10数億円。口コミをいくらたくさん集めても、広告が落ちてこない」(吉松CEO)。化粧品メーカーの広告費の投下先は、テレビなどマス媒体や、雑誌などがメイン。ネット媒体は「効果が高いのに」(吉松CEO)なかなか広告を出してもらえないという。

 口コミサイトにはどんな情報が書き込まれるか分からない――そんな不安も、広告主に出稿を思いとどまらせているようだ。「価格.com」を運営するカカクコムの安田幹広CTO(最高技術責任者)によると「口コミだけのページに広告を張りたい、という企業はあまりない」という。広告媒体としては売りにくい口コミ情報だが、その量は日々増加してサーバを圧迫するため、結果として「ROI(Return on Investment:投資に対する利益)は高くない」(安田CTO)という結果になってしまうようだ。

口コミ広告の誤解

 「口コミ広告はマス広告よりも安価で効果が大きいと思われている」――ブログサービス「はてなダイアリー」で口コミ広告を展開している、はてな執行役員の輿水宏哲さんは、こんな“誤解”に頭を悩ませる。

 「口コミ広告は、ユーザーさんにとって面白いネタを用意したり、ネガティブなコメントを大目に見たりといった努力が必要。成功させるのは大変」(輿水さん)

 はてなダイアリーの口コミ広告は、ユーザーに商品名を書いてもらい、抽選で商品をプレゼントする、というもの。広告主は、その商品に関するブログを充実させたり、ユーザーからの意見に逐一反応する、といったきめ細かい対応をして初めて、効果を挙げられるという。

画像 左からはてなの輿水さん、カカクコムの安田CTO、クックパッドの佐野社長、アイスタイルの吉松CEO

 国内最大のレシピサイト「COOKPAD」を運営するクックパッドの佐野陽光社長は、口コミ広告の内容がユーザーにとってメリットになるかどうかが重要と語る。

 「口コミ情報は、聞いた側にとって意味があるかを考える必要がある。『このお酢がおいしいから買って』と言うだけでは売れる時代ではない」(佐野社長)

 同社は、食料品の広告企画として、特定の食品を活用したレシピを募集し、ユーザー同士で評判を広げてもらう「レシピコンテスト」を開催。「ユーザーさんに楽しんでもらっている」(佐野社長)という。

広告主から“無理難題”も

 プロモーションと分からせずに口コミを広げたい――CGMを活用したマーケティングを手掛ける企業には、そんな“無理難題”も寄せられられるという。しかし以前、あるメーカーが広告であることを黙って展開していたプロモーションブログが“炎上”したように、広告であることを隠して口コミを広げようとすると、ネットユーザーの反発を買ってしまうおそれがある。

 アイスタイルの吉松CEOは「特定の商品について『ポジティブなレビューを書いて』とユーザーに頼む訳にはいかない」と言う。メーカーのサンプルを配る際に、そのメーカーにポジティブなコメントを多く書いているユーザーに渡す、ということまでならギリギリできそうという。

難しい効果測定

 口コミ広告には、分かりやすい効果指標がない――はてなの輿水さんはこんな悩みを明かす。

 「これまでの口コミキャペーンで最も反響が大きかったのはあるPC。ブログには商品名が6000も書かれ、PC名でGoogle検索すると、キャンペーンページが一番上に出るようになった。しかしそれを成果として説明しにくく、どれだけ購買につながったか証明するのも難しい」(輿水さん)

 広告効果を理解してもらうには「実績を作るしかない」とクックパッドの佐野社長は言う。広告事例を重ね、実績を積み上げていけば、広告主の理解が深まり、マーケットも広がっていくだろうという意見だ。

 「リアルを組み込んでいかないと、単なるネットメディアで終わってしまう」――アイスタイルの吉松CEOは、ネットだけにとどまらず、リアルの場に“出て行く”ことを提案する。同社は、店舗の商品に2次元バーコード付け、携帯で読み取るとその商品に関する口コミ情報を確認できるサービスなどを展開。ネットよりもはるかに大きな規模を持つリアル化粧品市場にビジネスチャンスを見いだしている。

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