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100ドルPCプロジェクトのディスプレイ、どこが画期的なのか?(2/3 ページ)

» 2006年08月22日 19時17分 公開
[Eric Lundquist,eWEEK]
eWEEK

―― 基本的なディスプレイ技術はどのようになっていますか? ディスプレイはLCD工場で製造できるようになるとのお話でしたが、つまり、LCDのバリエーションということなのでしょうか?

ジェプセン そうです。LCDのバリエーションと言えるでしょう。LCDを見直してできたものです。わたしはディスプレイ業界で20年の経験がありますが、これまでホログラフィックビデオやプロジェクションシステム、ヘッドマウントディスプレイ、マイクロディスプレイ、街区サイズのホログラムなど、さまざまな技術について奇想天外なデモを行ってきたにもかかわらず、結局、そのいずれも、CRTが達成したような方法での大量生産を成し遂げていません。LCDはそれを成し遂げました。生産体制に入った技術はたくさんあります。ですが、LCDの製造インフラはもはや世界中でDRAMやシリコンファウンドリーよりも大きくなっています。

―― なぜLCDなのでしょう?

ジェプセン 新しいディスプレイ技術のデモが最初に披露されてから大量生産にこぎつけるまでには通常、20年以上の歳月がかかります。ディスプレイソリューションを記録的短時間で見つけると決めたからには、既存の製造インフラをプロセスを変更せずに使うしかないということはわたしにも分かっていました。選択肢は1つしかありませんでした。5年前でも、HDTV(高精細テレビ)の世界でどの技術が勝利するかについては疑問の余地がありました。2年前でもそうです。次のページの表1を参照してください。もしあなたが来年、500万〜1000万台のノートPCを出荷する責任者だとしたら、そして、その翌年には5000万〜1億台のノートPCの出荷を予定しているのだとしたら、どの技術を選ぶでしょうか?

―― ディスプレイは、技術面での最後の問題点なのでしょうか?

ジェプセン ノートPCのそのほかの側面については、すべて基本的な技術はそろっていました。ですが、われわれは高解像度でローコストで省電力ディスプレイを必要としていました。そしてわたしは、太陽光の下での読みやすさも要件に追加しました。発展途上社会との作業に多くの時間を費やした結果、それがよいと考えました。(太陽光の下での可読性が)追加コストなしで得られることに気付いたからでもあります。

―― どのようにして、電力消費量を増やさずに、より高い解像度を実現するのですか? 電力消費量を7分の1にして価格も3分の1に抑えるというのは、非常に難しい要求に思えます。なんとか実現できるのでしょうか?

ジェプセン わたしはプロジェクトのノートPC用にLCDを再検討しました。LCDのコスト構造を調べ、われわれのユーザー、つまり世界中の子供たちのニーズを調べました。そうした子供たちの半数は、電力をほとんど、あるいは全く使えない環境で暮らしています。彼らの多くは、多くの時間を屋外で過ごしています。そこで、デュアルモードディスプレイを思い付きました。「Mode 1」での解像度は800×600(あるいはそれ以上になるかもしれません。1024×768にできれば素晴らしいでしょう)で、カラーバックライトが付き、電力消費量は最高で1ワットです。「Mode 2」の解像度は1200×900と高めで、太陽光によるモノクロ反射、電力消費量は最高で0.2ワットです。Mode 2は、バックライトをオフにして室内でも利用でき、この場合も電力消費量は最高で0.2ワットです。このディスプレイを機能させるためには主要なポイントが幾つかあります。それらすべての要素が一緒になって、大きな効果を発揮します。

―― 技術的な詳細をもう少し教えていただけますか?

ジェプセン では、1点目から。ピクセルのレイアウトをカラーの対角ストライプに変更しました。これにより、パネルの解像度を水平方向と垂直方向の両方に増減できるようになりました(標準のレイアウトでは、水平方向にしか増減できません)。

 2点目。革新的なバックライトソリューションにより、コストのかさむカラーフィルターの一部(あるいはすべて)を削除しました。本当のところ、現在も多様なソリューションを開発中で、この一連のソリューションの最初のバージョンはちょうど先週、動き始めたところです。これにより、光の処理能力が高まり、その分、電力消費量が大幅に軽減されています。

 3点目。ピクセルを常に特定のカラーに制限しないことにしました。どのピクセルも、あらかじめ色を指定しておくか、モノクロにしておくことができます。この変更は、思っていたよりもはるかに大きな効果をもたらしています。この方法により、ディスプレイの鮮明さ(解像度)を大幅に強化できます。

 4点目。コストのかかるインタフェースは大半を排除しました。そのおかげで、最近一般的なLVDS(Low Voltage Differential Signaling)の代わりに、低コストの新しいTTLインタフェースを使うことができました。LVDSはコストが高く、電力を消耗し、ノートPC用の大半のLCDで必要とされていますが、わたしのディスプレイでは、各ピクセルがカラーにもモノクロにもなるため、現在市場に出回っているノートPCのうち95%の製品よりも高い解像度を実現できます。

 5点目。革新的な液晶モードの設計により、LCDの光学フィルムのコストを削減し、一方では、光の効率を高めています。

 6点目。バックライトには、従来のCCFL(冷陰極管と呼ばれる小型の蛍光ランプ)ではなくLEDを使うようにしています。これで、環境への影響も改善できます。

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