世界中の子供たちにノートPCを与えようと、ニコラス・ネグロポンテ氏が発起人兼会長となって率いている非営利プロジェクト「One Laptop per Child(OLPC)」では、100ドルノートPCの構築にとって最大の技術的障害となっている問題を近く解消できる見通しという。
その障害とは、暗い場所から明るい太陽光の下まで、さまざまな状況下で判読できる頑丈で安価なディスプレイの開発だ。ディスプレイはこれまで、多様な状況で使えるノートPCを構築する上で常に障壁となってきた。ディスプレイは従来、多くの電力を消費する傾向にあり、また、暗い場所での判読が難しく、明るい太陽光の下での判読もほとんど不可能だったからだ。金銭面での衝撃の事実を知りたいのであれば、ノートPCベンダーに電話をかけて、壊れたディスプレイを取り替えるための費用がどのくらいかを尋ねてみるといい。おそらく、新たにノートPCを購入するよりもディスプレイを取り替えるだけの方が高く付くという現実を知らされることになるだろう。
ところで、OLPCプログラムの最高技術責任者(CTO)によれば、同プロジェクトでは新しいディスプレイの開発に成功したという。このディスプレイは、標準的な液晶ディスプレイ(LCD)の工場ですぐにも大量生産でき、現在市場に出回っているノートPC用ディスプレイのうち95%の製品よりも解像度が高く、従来の電力消費量の約7分の1で動作し、価格は従来の3分の1で、なおかつ太陽光の下でも室内でもバックライトなしで読み取れるという。
こうした性能および機能が本当に実現したのであれば、ディスプレイ業界にとっては、コンピュータメーカーが薄型ディスプレイでコンピュータを製造できることを発見し、ノートPC時代の到来が告げられた時と同じくらいに重大な変化と言える。ノートPCメーカー各社は目下、熱問題の限界に達する(ときには上回る)バッテリー要件を回避するには、冷却システムをいかに稼働させればいいかについて、必死に解明に取り組んでいる。「電力消費量」と「読みやすさ」のいずれの点でも妥協せずに済むディスプレイ技術が実現すれば、各社はこぞってその技術を支持するだろう。
OLPCプロジェクトは、どのようにしてディスプレイ技術の革命を成し遂げたのだろう? まず最初のステップはノートPC界の最高の技術者を雇い入れることだった。その人物とは、OLPCの創立当初からCTOを務めるメアリー・ルー・ジェプセン氏だ。同氏は1995年には、マイクロディスプレイの開発に専念する初めての会社を共同で設立している。また同氏は、Intelのディスプレイ部門のCTOを務めた経験もある。同氏の履歴書を見るのは、まるでディスプレイ開発の歴史を眺めているようだ。そして同氏は今年9月には、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボの教授に就任し、ノマディックディスプレイ(いつでもどこでも使えるディスプレイ)の研究を統括する予定だ。
ジェプセン氏の経歴は以上のとおりだ。わたしは、同氏が台湾でOLPCディスプレイ作業の仕上げ段階にあるときに、電子メールで連絡を取ることができた。同氏はちょうど、基調講演のため、そして結婚準備のために米国に戻るところだった。以下のQ&Aセッションおよびスライドショーは、今後、OLPCプロジェクトの基盤を構築することになるであろうディスプレイに関する初めての詳細情報だ。
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