Windows Vistaのパフォーマンスが遅いという不満が高まっている。β版のソフト――Microsoftがそう呼びたいもの――を指して言うのは不公平だが、警告フラグは既にはっきりと見えている。
最近AppleのMac OS X LeopardとVistaを比較したコラムを掲載した後、わたしのメールボックスには山のように不満を訴えるメールが届いた。読者のランドール・アサト氏からのメッセージは、Aeroをやや古いハードで実行できると思っている人は、うまくいかないだろうと警告している。
同氏は、Vistaのβ版に搭載されている麻雀とソリティアのデモゲームは、Vista向けに書かれたドライバを使っても「ひどく遅かった」と話している。同氏のシステムは2.8GHzのIntel Pentium 4、768Mバイトのメモリ、ATI All-In-Wonder 2006 AGPを搭載している。同氏はこのGPUは最新のものではないと認めているが、「決して遅くはない」としている。
ほとんどのアップグレードユーザーは、少なくとも十分なVRAMを載せた新しいビデオカードを買わなくてはならないだろうと同氏は述べている。
「Vista Aeroを十分に活用できる唯一のグラフィックスカードは、アップグレード時にはおそらくPCIe(Express)のカードだけだろう――AGPや標準的なPCIのカードでは無理だ」と同氏は記している。
心配は無用だ。MicrosoftのVistaチームはパフォーマンスに焦点を当ててきた。8月25日に同社はRC1(リリース候補第1版)前のBuild 5536.16385をリリースした。これまでのβ版よりも高速だと同社は話している。
しかし、ほとんどのハード構成でVistaの基本性能は期待外れかもしれないという兆候が見られる。あるいは少なくとも、VistaはWindows購入者の使い慣れたシステム構成では動作が遅いのではないかと懸念されている。
Vistaチームの最近の発言から考えると、Microsoftはユーザーが満足のいくレベルの性能を実現するために、フラッシュメモリを活用するVistaのSuperFetch、ReadyBoost、ReadyDrive技術を利用するのを当てにしているようだ。ReadyBoostは、フラッシュメモリをキャッシュとして利用してシステム全体とアプリケーションの性能を高め、ReadyDriveはHDD上のフラッシュメモリキャッシュを使ってブート時間と電力使用を改善する。
MicrosoftのWindowsクライアントパフォーマンス担当プログラムマネジャー、マット・エアーズ氏は先日、Flash Memory Summitでフラッシュメモリベンダー向けにこれら技術のプレゼンテーションを行い、これら「Ready」プログラムは「より一貫したコンピューティング体験を提供し、Vistaをより高速に走らせる」と説明した。
同氏によると、ほとんどの場合、アプリケーションはある程度一貫したユーザー体験が十分得られるくらいの速度で動作するという。とは言え「ユーザーにとって困るのはシステムの減速だ」と同氏は語った。
エアーズ氏は、短時間ではあったがReadyBoostとReadyDriveがもたらすパフォーマンス上のメリットを示した。それにSuperFetchアルゴリズムは時間とともに向上していく。このアルゴリズムを使えば使うほど、全体的に性能が良くなっていくと同氏は説明した。
一方、最近オンラインで持ち上がっている「緩慢な」パフォーマンスへの懸念に応え、Vistaエバンジェリストのキース・コームズ氏は8月初旬に、ReadyDrive対応HDDによる性能向上に期待してほしいとメディアに語った。
あるマシンが「2倍のメモリや2倍高速なGPUを積んでいたとしても、結局はHDDのせいで(そうでないマシンと)スコアが同じになる。この点はVistaのリリース前に変わるだろう」と同氏は話していた。
これはフラッシュメモリを組み込んだ「ハイブリッド」ドライブの登場によって実現され、性能レベルは高まるだろうと同氏は語った。
しかし、SamsungおよびSeagate Technologyからハイブリッドドライブが登場するのは2007年の第1〜第2四半期だ。しかも、これら2社はいずれも、製造に入れそうな段階のものを見せていない。Seagateのドライブは未完成のコンセプト実証モデルで、メモリモジュールがドライブの上に接着剤ではりつけられていた。だがそれでも動作はしていた。
ユーザーがVistaである程度一貫したパフォーマンスを得るには、フラッシュメモリの助けを借りなければならないかのようだ。
Vistaのパフォーマンス調整はどのくらい大変なのだろうか? 間違いなくこの作業はソフト・ハード開発者に押しつけられているが、性能と信頼性を追跡するMMC(Microsoft Management Console)の一部としてIT管理者にも押しつけられている。
「Windows Performance Diagnostic Console」はアプリケーションとサービスが性能に及ぼす影響を追跡するツールで、ユーザーやシステム管理者にアラートを送信する性能パラメータの閾値を設定できる。
「性能」という言葉が出てくるときに、ほとんどの場合「信頼性」という言葉が一緒かその次に出てくることにわたしは注目している。MMCの診断はそこが特徴なのだ。
それでもユーザーにとっては、性能がユーザー体験のすべてだ。コームズ氏のエントリには、「Windows Experience Index」レーティングを示すスクリーンショットが掲載されている。同氏の言うように、全体のスコアはシステムの最も性能の低い部分――この場合はHDD――によって決まる。
それと同時に、Windows市場で提供されている従来の不十分なシステム構成が性能を落としているのかもしれない。多くのマシンは512MバイトのRAMが搭載されており、この市場ではそれで十分だと考えられている。
例えば、ソフト業界はいまだに、Windows XPマシンは256MバイトのRAMで必要な、あるいはユーザーが望むすべてのタスクができるというフィクションを主張している。たいていのソフトでは、256Mバイトを基本的なシステム要件として挙げている。
だが、メモリの量はユーザビリティとはほとんど関係がない――これは冗談だ。
机のそばの棚から一番近くにあるソフトウェアスイート(名前は伏せておく)を手に取ってみたところ、このスイートを実行できる基本構成は800MHzのPentium III、256MバイトのRAMだと書いてあった。だが小さな字で書かれた注意書きには、珍しく正直に、複数のプログラムを同時に実行したい――誰でも作業を終わらせるのに必要なことだ――場合は、1GバイトのRAMが「推奨」されると付け加えられている。
だがVistaに関して言えば、もっと多くのRAMが必要になるだろう(それから同OSをフルに活用するには、あらゆる部品がもっと必要になる)。Vistaの基本メモリ構成は512Mバイト、Aeroを使うなら1Gバイトになる。だが実のところ、本当に使える基本レベルは2Gバイトだろう。
Vistaについては、身軽なほどいい、ということはない。決してない。実際は、多いほど十分なのではないだろうか。
皆さんはVistaの性能に余分なお金を払うつもりはあるだろうか? 教えてほしい。
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