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「OSとしてのブラウザ」時代、いよいよ到来か?

» 2006年09月21日 12時50分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 10年余り前、次世代コンピューティングの中心になると大方が予想していたものについての新たな考え方が登場した。OSとしてのブラウザという概念だ。

 Webが草創期にあり、ダイナミックに進化していた当時の時代の中で、多くの専門家や大手IT企業がNetscape Communicationsの大成功とJavaの新しい可能性に注目し、OSは重要ではなくなり、アプリケーションはブラウザ用に開発され、主にWeb経由で提供されるようになると宣言した。

 10年前にはブラウザはまだかなり原始的なものだったし、圧倒的多数の人がまだダイヤルアップ接続を利用していたため、わたしは当時、OSとしてのブラウザという考え方を支持しなかった。だが、この考え方を非常に真剣に受け止めた人も多かった。その中にはMicrosoftの経営陣も含まれる。

 Microsoftがブラウザ戦争に突き進んだのは、Netscapeをねたんだからでも、あらゆるカテゴリーでトップになろうとひたすら望んだからでもない。振り返ってみると、Microsoftは明らかに、Webブラウザが本格的なOSの役割を果たすようになることを心配していた。そうなれば、WindowsはDOSのような地味な位置に追いやられていただろう。

 Microsoftは確かにうまくやった。Netscapeを打ち倒し、Webブラウザ市場をほぼ制圧することで、Microsoftはブラウザの重要性を低下させ(同社のブラウザ、Internet Explorerを単にWindowsの機能と呼びさえした)、Webを、ブラウザで見られるものから、アプリケーションと連携するものに変える(とともに、Windowsアプリケーションに大きな役割を持たせる)という計画を進めることができた。

 だが、この2年間でブラウザとWebの市場や技術には大きな変化が起きている。その変化が、OSとしてのブラウザという概念の有効性をかつてなく高めている。

 そうした大きな動きの1つは、かつてのNetscapeブラウザのコード基盤がまずMozillaとして、続いてより重要なFirefoxとして復活したことだ。真にモダンなWebブラウザとしての実力を広くアピールし、FirefoxはInternet Explorer(IE)の市場シェアを大きく奪った。さらに、Firefoxの成功で、MicrosoftはIEの強化を迫られた。

 一方、サービスベースのエンタープライズアプリケーションの成熟が進んだことで、ユーザーは、Web経由で実行され、Webブラウザに提供されるアプリケーションを従来よりはるかに快適に利用できるようになった。また、最近のAjaxの進化に伴い、現在のブラウザベースのアプリケーションは、GUIの洗練度と対話性が高いレベルに達しており、OS上で直接実行されるアプリケーションとほとんど見分けがつかない。

 こうした一連の展開はわたしにとっても、OSとしてのブラウザの可能性を信じる十分な材料だ。実のところ、もうわたしはその考え方にかなりなじんでいる。

 メッセージングとコラボレーションに関しては、わたしはほぼ100%ブラウザに頼っている。Webメールで自分のメールアカウントの大部分にアクセスし、ブラウザベースのアプリケーションでほとんどのコラボレーション作業を行っている。分析やコンテンツ作成もブラウザ内で行うことが多い。

 また、わたしはスプレッドシートの共有や利用のためにGoogle Spreadsheetsというブラウザベースアプリケーションを使っている。このアプリケーションは、会社で使っているLinuxベースのメインデスクトップでも、家のWindows XPシステムでも、Mac OS XベースのノートPCでも、まったく同じように動作する。Google Spreadsheetsに関して言えば、ブラウザはまさにOSだ。

 誇張にならないように、こうした変化はまだ始まったばかりの段階であることを補足しておこう。わたしはデスクトップベースのアプリケーションを以前ほど使わなくなったが、日常的に使わなければならない重要なものが、まだ幾つもある。優れたブラウザベースアプリケーションの多くも、ローカルのデスクトップアプリケーションをしばしば併用する必要がある。

 しかし、OSとしてのブラウザという考え方は、明らかに復活している。これまで以上に有力になっているのかもしれない。ただしもちろん、ブラウザが本格的なOSのように機能するのは、ブラウザ用のセキュリティアプリケーションが開発されるようになってからだろう。

 そういえば、MicrosoftはIEを保護するBrowserShieldに取り組んでいる。どうやらMicrosoftも、OSとしてのブラウザという考え方を改めて信じるようになったらしい。

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