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Web2.0が直面する「2007年危機」

» 2006年12月20日 10時25分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 「わたしは時間と空間を曲げられるのだ!」。突然どこからともなく現れた変な日本人はそう言った。

 「うわあっ」とわたしは驚きの声を上げた。「君は誰なんだ。どこから来た?」

 「わたしはヒーローだ。1年後の未来から君のもとへやってきた」

 「ちょっと待て。分かった――君はあのテレビの新番組のヒーローだな。チアリーダーを助けて、世界を救えと言いに来たのか?」

 「あんなバカなチアリーダーのことは忘れろ!」。そう言ってヒーローは続けた。「もっと大事なニュースを持ってきたんだ。Web2.0は2007年に、その存在を脅かすたくさんの深刻な脅威に直面することになる」

 「それは興味深いな。みんなに警告しないと。でもその前に聞きたいんだけど、あの番組に出てくるブロンドの美女は自分のパワーと邪悪なる半身を制御しているのか?」

 「彼女にはパワーはない――彼女はいかれてるんだよ! それよりちゃんと聞け。Web2.0が2007年に直面する最初の脅威は、その存在のまさに中核を襲うものだ。RSS――そう、ブログやポッドキャスト、ニュースフィード、カスタム検索、その他Web2.0の多くの要素を購読可能にする技術だ――が悪党どもに堕落させられ、その自動配信機能をウイルスやトロイの木馬、スパム、スパイウェアの配布に利用されてしまうのだ。これを防ぐため、すべてのWeb開発者とWeb2.0標準の守護者にRSSをできるだけ安全にするよう警告しなくてはならない」

 「よしきた。すぐにRSSのセキュリティの危険性について警鐘を鳴らすとしよう。でもその前に、あの番組では、インド人の教授が実は超能力者だってことが明かされるんだろう?」

 「話に集中してくれよ」と諭すようにヒーローは言う。「ミスター・スポックみたいに、論理的になってくれ。最初の警告はAjaxについてだ。2007年、Ajaxは2つの大きな事件の中心になる」

 ヒーローは続けてこう語った。「最初の問題は、リッチなマルチメディアサイトとアプリケーションの開発を可能にするAjaxのパワーが原因だ。2007年に、開発者たちはあまりに行きすぎたAjaxサイトを作り、そのためにWorld Wide Webは破綻させられることになる。Webサイトは派手な広告やビデオ、GUIライクなメニューやウィンドウであふれかえる。そんなギラギラしたAjaxサイトのせいで起きる頭痛や不満、発作が原因で、ユーザーはWebから離れてしまう。君はWeb開発者に、Ajax機能をWebサイトに加えるときはトーンダウンするようにと警告しなくてはならない」

 「それなら既にやっている」とわたしは少々言い訳がましく言った。「まさにこの前のコラムのテーマがそれだった。わたしはこの戦いを続けるよ。それで、Ajaxの2番目の問題は?」

 ヒーローはしばし考えて言った。「2007年には絶えざるユーザーの不満から、MicrosoftのInternet Explorer(IE)からのユーザー流出が続く。IEのブラウザ市場でのシェアは50%以下に落ち込む」

 「流出に歯止めをかけるため、Microsoftは『取り込んで拡張する』という昔の戦略に立ち戻る。同社はAjaxの主要な要素の多くがMicrosoft製ブラウザでだけ動作するよう、Ajax標準を変更するようになる。これにより、再びIEでしか適切に動作しないWebサイトが増える。開発者や標準化団体、そしてユーザーがこの変更と戦い、Microsoftに真のWeb標準を守らせるよう、彼らに警告しなければならない。そうすればWebが再び分裂するのを防げる」

 「なんてひどいことだ。ようやくIEでしか動作しないサイトの終わりが見えたというのに」。溜息をつきながら、わたしは答えた。「Web開発者が特定のブラウザではなく、標準に従ってサイトを構築し続けるよう、わたしは戦うよ。ああ、そうだ。もう1つ聞きたいんだが」

 「あのピーターというキャラがローリー・ギルモアと一緒に戻ってきて、それで彼の父親のロッキー・バルボアがパワーを使って彼を助けるのか?」

 「おバカなITライターだな――テレビと映画がごっちゃになってるぞ」。しかられてしまった。「これは深刻な問題なんだ。2007年、Web2.0とWebそのものが、最近の進歩を危機にさらす深刻な脅威に直面するんだ。標準はそのカギだ。開発者は標準を取り入れ続けなくてはならないし、標準化団体はRSSなどの技術が悪用されないようできるだけ安全にするためにがんばらなければならない」

 「標準を救え。World Wide Webを救え」。ヒーローはそう言った。

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