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番組違法コピーのオークション出品、テレビ局とACCSが監視強化

» 2007年01月25日 20時41分 公開
[ITmedia]

 NHKと民放テレビ局などで構成する地上デジタル放送推進協会(D-pa)は1月25日、番組を録画・複製したDVDなどをネットオークションを通じて違法に販売する行為を防ぐため、オークション監視活動の強化や情報提供窓口の開設といった対策を始めると発表した。

 PCソフトの海賊版対策で実績を持つコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が協力。D-paが放送局側の監視条件を集約してACCSに伝え、ACCSが能動的にオークションなどをパトロール。テレビ局の著作権を侵害している出品物がないか、監視する。

 当面はYahoo!オークションを集中的に監視。ヤフーとACCSで合意した、違法出品の削除を要請する枠組み(関連記事参照)に基づき、判断基準に合う出品物があればACCSがヤフーに削除を要請する。判断基準やパトロール頻度などは公開しない。

 監視強化に加え、一般からの情報提供をネットで受け付ける窓口「ホットライン・テレビ番組著作権」を開設。オークション出品者や出品内容などを通報できる入力フォームを設け、寄せられた情報はACCSが放送事業者と連携して調査し、ヤフーに削除を要請する。

photo NHKの島津有理子アナウンサー

違法出品対策を効率化

 テレビ各局は、ドラマやアニメ、歌番組などを録画したDVDなどをオークションで違法販売する行為に手を焼いている。従来の海賊版販売はアングラな業者によるものが多かったが、ネットオークションの一般化とデジタルレコーダーの普及などで、個人が“気軽”に販売するケースが増えたという。

 D-paによると、違法出品を見つけて削除につながるケースは、在京局が把握しているだけで年間1万件超。だがこれは「氷山の一角」とみられ、実際の出品された件数は相当数に上るとみている。

photophoto

 違法出品は、各局が見つけては“もぐらたたき”的に処理しているのが現状。だがフジテレビジョンの佐藤信彦デジタルコンテンツ局次長によると、削除を避けるため「テレビ局員が出社しない土日を狙って集中的に出品する例もある」といい、負担は少なくない。

 最近はYouTubeへの違法アップロードが問題化しているが、「ネットオークションへの違法出品への対策に手間を取られ、YouTubeまで手が回らない」というのが実情という(関連記事参照)

 地上デジタル放送の本格スタートにあたり、放送局側は2004年4月、番組の録画を1回に限る「コピーワンス」を導入した。「コピーワンス導入は技術的な対策。ソフト面の対策も求められる」(テレビ朝日の大塚隆広取締役)として、新たにネットオークションの監視強化を打ち出した。ネットオークション上の海賊版対策に取り組んできたACCSにパトロールを依頼することで、違法出品対策を効率化するのが狙いだ。

 「番組の違法コピーが増えれば、クリエイターの意欲が低下したり、これを嫌って俳優がデジタル放送への出演を拒否するようなこともありうる。そうなればテレビコンテンツのレベルがダウンし、視聴者も豊かなテレビライフを享受できなくなるかもしれない」──というのがテレビ各局の主張。監視強化などの一連の対策は「放送事業者の強い意志を示すため」(大塚取締役)でもある。

 情報提供窓口ではYouTubeのアップロード情報も受け付けるが、当面はYahoo!オークション上の違法出品対策に集中し、YouTube関連は各局への情報提供にとどめる。だが将来はYouTubeにファイル削除を要請していく仕組みづくりもありうるとしている。

 コピーワンスをめぐっては、総務相の諮問機関・情報通信審議会で見直し作業が進められている(関連記事参照)。担当者は「コピーワンスとコピーフリーの間に妥協点があるのでは、という認識で議論が進んでいるようだ。近いうちにとりまとめて発表されるのでは」と話した。

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