携帯電話の勝手サイトが着うたの“無法地帯”になっている。一般ユーザーが、CD音源を携帯電話で再生可能な形にエンコードし、DRMなしの着うた(※注1)を自作。掲示板サイトなどに張り付け、他ユーザーに無料でダウンロードさせている。
着うたビジネスを展開するレコード会社や権利者団体、携帯キャリアは事態を深刻に受け止め、違法着うたの実態を把握するための調査に乗り出した。一部のレコード会社は専門スタッフを設置。対策に追われている。
携帯電話の勝手サイトには、違法着うたがいたるところに散らばっている。検索サービスで人気のアーティスト名の着うたを検索すると、DRMなしの音声ファイルが次々にヒット。一部の大手サイトには、1000を越える違法着うたがアップロードされており、その数は日々増え続けている。最新の楽曲や人気の楽曲なら、どこかに“落ちて”いると考えて間違いないだろう。
(※注1)着うたはソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の商標で、本来は、CDなどの音源の一部分を、音源の権利者の許諾を得て携帯電話向けにエンコードしたファイルを指す。
CD音源をユーザーが勝手にエンコードし、着信音ファイルにした場合は厳密には「着うた」と言えず、「えせ着うた」などと呼ばれることもある。記事中では便宜上、こういったファイルも「着うた」と表記した。
ちなみに自作の「えせ着うた」も個人で楽しむだけなら違法性はないが、Webサイトにアップロードすると著作権法違反(公衆送信権の侵害)になる。
違法な着うたサイトの多くが、ファイル張り付けに対応した掲示板だ。まず、趣味など着うたを作成しているユーザー(「着うた職人」と呼ばれる)がCD音源をエンコードし、DRMなしの着うたを自作。掲示板に張り付ける。着うたを探している別のユーザーは、掲示板にアクセスして着うたをダウンロード。他の掲示板にも張り付けて広めていく。
掲示板形式でない一般のWebサイトで違法着うたを提供している例も一部ある。
「リクエスト掲示板」を設けている違法着うたサイトも多い。ユーザーは、欲しい着うたの楽曲名やファイル形式、容量などを掲示板で指定。サイト管理人や音源を持っている別のユーザーが、着うたを作成してアップするというものだ。リクエストしたユーザーは、お礼として別の着うたを掲示板にアップしておくという“文化”もある。
着うた制作は、CD音源とPCさえあれば難しくない。作り方を教えてくれるサイトやエンコードのためのツールは、PC向けサイトを検索すればすぐに見つかる。また、音声ファイルをアップロードできるWebサイト作成サービスや掲示板サービスは数多くあり、着うたサイトや着うた掲示板を誰でも簡単に作れる環境は整っている。
着うたサイトの運営者側の目的としては、(1)「好きな楽曲の着うたを提供して他のユーザーにも楽しんでほしい」「高音質着うたを作れる技術を誰かに自慢したい」というコミュニケーション欲求や自己顕示欲と、(2)「無料の着うた」で集客して別サービスに誘導したり、広告をクリックさせてアフィリエイト料を稼ぎたいという金銭目的──の2つのケースが考えられる。
(1)の目的で作成されていると思われるサイトは、シンプルな構成で、着うたファイルに簡単にたどりつけるようになっている。リクエスト掲示版が充実していたり、着うた職人の自己紹介ページがあることも。ただ着うたのラインアップが管理人の趣味に偏っており、数も少ない。
着うたコンテンツが充実しているサイトは(2)のタイプが多い。このタイプは、ファイル形式や対応機種別・アーティスト別に掲示板を設けてユーザーが着うたを自由に投稿。大手サイトでは、1000を優に超えるファイルがアップロードされている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR