Wikipedia記事のチェック体勢は、言語によって異なるという。「記事が少ない言語の場合は、ある程度信頼性があると判断すればどんな記事でも取り込む傾向がある。規模が拡大すると質の重要性が増す。これからは、量だけでなく質も重要。Wikipediaをより良くするために、ユーザーを啓発していきたい」(ウェールズ氏)
言語によっては、記事のバージョン管理を厳格にし、新規登録した人が編集した場合は、古くからいるユーザーが内容をチェックする、といった体勢も採る。「記事内容を100%正しくすることは難しいが、新しい人にとってもオープンな場であり続けたい」(ウェールズ氏)
Wikipediaの記述をめぐる訴訟は、これまでにドイツで2件起きただけという。「Wikipediaは、過激で自由な言論の場ではない。ユーザーには、中傷したくないという気持ちがあるのだと思う」(ウェールズ氏)
人を信じて運営することが、健全なコミュニティー構築につながるとウェールズ氏は語る。「ステーキを出すレストランを作ろうという時、ステーキナイフでお客さんが人を刺すかもしれないからと、お客さんを牢屋に入れても仕方がない」
「オープンな場をうまく運営するには、ほとんどの人がいい人だ、と信頼することと、問題が起きたときには独善的に解決しようとするのではなく、トラブルメーカーに対するアプローチを考え、平和的に対応する必要がある」
ウェールズ氏のこういった意見を受け、西氏は「その考えはすばらしいと思う」とした上で「ローカルなボランティアが、Wikipediaの本当のコンセプトを理解していないことで問題が起きているのでは。日本では、2ちゃんねる(2ch)の流れをくんだ変なDNAがあり、変に運営している人がいる」などと語った。
ウェールズ氏も2chに言及し、「日本には2chという、匿名で誰でも好きなことを言える、過激で自由な言論文化があると聞いている。Wikipediaの記述は、責任のある形にしていきたい」とした。
Wikipediaが推進する「フリー」な文化は今後、大きく発展していくとウェールズ氏は期待する。
「(ストールマンの言う)フリーソフトを思い出してみると、当初は大したものはなかったが、それらが原材料となってGNU/Linuxが誕生した。いま、Wikipediaや、クリエイティブ・コモンズの仕組みを取り入れた画像共有サイト『Flickr』、動画共有サイトなどが登場し、“パズルの断片”ができてきた。これらがクリティカルマスに達すると、知的交流が起き、新しい創作が始まる」
ウェールズ氏は、新たな文化を作りたいという。「商業ベースで大量生産するポップカルチャーや、政府などが支援している伝統的な芸術文化という既存の文化ではなく、3つめの道――非営利で、知識や情報を他の人に提供し、面白いものを作る――という道を、Wikipediaは選びたい」
ウェールズ氏が運営する、Wikipediaのリソースを活用した営利企業Wikiaでは、オープンソースの検索エンジンの構築を計画している(関連記事参照)。
「すべてのアルゴリズムを公開した透明性の高いサーチエンジンを作りたい。今年第4四半期にローンチし、2〜3年かけて改良していきたい」(ウェールズ氏)
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