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ひろゆき氏、「ニコニコ」ヒットでも「動画は“来て”ない」(1/2 ページ)

» 2007年05月11日 21時55分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ひと昔前までは「重い」「再生が面倒」などと敬遠されてきた動画コンテンツが、ここ数年で急速に一般化した。YouTubeをはじめ、Flashで手軽に再生できる動画配信サイトが人気を集め、国内ではニワンゴ「ニコニコ動画」の人気が止まらない。だがニワンゴの取締役で、2ちゃんねるの管理人・西村博之氏は「動画サイトはまだ“来て”ない」と語る。

 ひろゆき氏は、クリエイターのネットワークを運営するロフトワークとパズブロックが主催したセミナーに参加し、動画サービスの可能性やクリエイターの条件などについて語った。ロフトワーク社長の諏訪光洋氏がモデレーターを務め、パズブロックの長田恒司氏も参加した。

3億再生でも「動画は来てない」

画像 ひろゆき氏は「動画は“来てない”などと言い、いきなり落としてしまって済みません」とのっけから謝罪した

 諏訪氏が「ネット上でムービーが来る来る、と言われていたが、この1年でようやく来たかな、という印象がある」と振ると、ひろゆき氏は「来る来ないの話で言うと、来ないというのが現実」といきなり冷や水を浴びせる。

 「動画はトラフィックがやたらと大きくなってしまい、回線コストがかかるのでなかなか規模が広げられない。YouTubeのトラフィックコストは月間2億円、年間だと数十億円になると聞くが、年間の利益は1億5000万円程度。それでビジネスが成立するかというと難しいのでは」(ひろゆき氏)

 「とはいえ、エロ動画は2年前ごろから収益モデルができてきている。エロでうまくいけば、いずれ一般化するというのがネットでは」と諏訪氏が食い下がると、ひろゆき氏は「有料配信するとしても、課金システムにもコストがかかる。高画質できちんと動画を送ろうとすると割に合わない」と指摘した。

画像 「ニコニコ動画では、アニメの主題歌の背景映像に別のアニメを載せるというコンテンツがよくある。こういった動画は、ガイナックスのクリエイターもWeb以前から作りたがっていたもの」と長田氏はトリビアを披露

 「無料の広告モデルも厳しい。テキストサイトなら1ページあたりせいぜい100Kバイトくらいだろうが、動画サイトだと100Mバイト・1000倍にもなる。だからといって動画サイトにテキストの1000倍の広告料金を払ってくれるかというと、そうではない。この問題を解決するくらいなら、TSUTAYAにでも行ってビデオを借りた方がいいんじゃないか」(ひろゆき氏)

 PC向けは無料とし、携帯電話版を有料化して稼ぐというビジネスモデルも考えられる。ニコニコ動画もこのほど携帯版(対応機種はNTTドコモの90xi/70xi限定)のテストサービスを始めたが、ひろゆき氏は携帯版の収益化も現状では難しいと見ている。

 「モバイル版はよく使われていて、需要があることは分かったが、パケット代はドコモに落ちていてニコニコ動画には1円も入ってきていない。パケット代を払った上で、動画にもお金を払うというユーザーは限られていて、市場はかなり狭いのでは」(ひろゆき氏)

“自分撮り”動画作家は「増えない」

 諏訪氏は、日本と海外の動画コンテンツの性質の違いについて「日本だと既存コンテンツのコラージュ的なものが多いが、海外だとユーザーが自分自身を面白おかしく撮った動画が人気。国内でも海外のような流れはありえるだろうか」と2人に尋ねる。

 長田氏は「日本人は手工芸的なものを作るのが好き。アニメのようなものが主流を占める状態は変わらないだろう」と展望。ひろゆき氏は「人間が出て面白いことをするなら、テレビをつければ無料で見られる。それをいちいちネット上で、小さな画面で見る必要はない」と一蹴した。

動画CMでクリエイターの仕事は増えるか

 ネット動画の普及とともに、Webの動画CMがクリエイター活躍の新たな場として期待されている。諏訪氏は「CM映像を安価に作るニーズが高まるのでは」と述べるが、ひろゆき氏はこれにも否定的な見方だ。

画像 諏訪氏(=画像)は「Flashクリエイターが若年層に広がり、ここ数年で学生も増えてきている」と語るが、ひろゆき氏は「Flash制作ソフトなんてあんな高いもの、学生で買えるんでしょうかねぇ?」とつぶやき、諏訪氏が「体験版で作ってるんです」と取りなす場面も

 「CMは、ものを告知するだけの目的ならば例えば『大根198円』とか連呼していればいい。ただブランディング広告となると、CMの質が商品イメージとリンクしてしまう。質の低い動画を使ってブランディング広告を展開しようという企業はそんなにないと思う」(ひろゆき氏)

 諏訪氏は「バズ広告のトリガーとしてはありえるのでは」と可能性を語るが、ひろゆき氏は「例えばマイクロソフトのようなブランド価値の高い会社が、敢えてしょぼいCMを展開すれば、そのギャップが惹きつけるだろうが、金のない会社がしょぼいものを作っても、ギャップもなくてしょぼいものがあるだけ。プロレス的に、ネタの1個としては成立するだろうが、手法としては確立しないだろう」と返した。

 これに対し長田氏は「お金をかけずにアイデアで勝負することはできる」と指摘。ひろゆき氏も、今後活躍できるクリエイターはアイデアが重要だとし、「絵がうまいとか、プログラミングができるといった部分は、今後の技術やノウハウ進化でどうにかなるかもしれないが、コンテンツはアイデア次第。(個人制作のFlashアニメがテレビ番組・映画になった)蛙男商会のフロッグマンさんは、ぼくから見ても絵はうまいとは思えないが、すごいのはアイデアと行動力。目に見えない、手先じゃない部分の違いが重視されるのでは」と語った。

著作権とどう付き合う

 動画サイトには、テレビ局などの著作権を侵害したコンテンツが投稿されることも少なくない。諏訪氏は「コミケでは(漫画などの2次創作が権利者に無断で行われているが)『出版社に損をさせなければいい、という暗黙の了解がある。ネット動画でも同様な仕組みを可能にできないだろうか」と提案するが、ひろゆき氏はこの考え方にも否定的だ。

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