トランスコスモスとフロム・ソフトウェア、産業経済新聞社の合弁企業・ココアは6月5日、「Second Life」のようなネット上の3D仮想空間「meet-me」α版を今冬に公開すると発表した。東京の街をリアルに再現した3D空間内で、ユーザーが自由に家を建てたり買い物ができたりするサービスにするという。
仮想世界などの開発は、数々のゲームソフトを手掛けてきたフロム・ソフトが担当し、キャラクターデザインにはアニメ制作会社のプロダクション・アイジー(I.G)とぴえろが参加。国産ならではの親切さやキャラクターデザイン、アダルトコンテンツの排除などでSecond Lifeとの違いを打ち出し、子どもや女性も楽しめる世界を構築するとしている。
ココアは3D仮想空間(メタバース)構築・運営などを目的に3月に設立された新会社で、資本金は1億円。トランスコスモスが70%、フロムソフトが20%、産経新聞が10%出資した。社長はトランスコスモス専務の森山雅勝氏。
meet-meは、PCに専用ソフトをインストールして楽しむ、Second Lifeのような3D仮想世界だ。現実の東京23区内の建物を精密に再現した街を作り、ユーザーが自由に動き回って他のユーザーとコミュニケーションしたり、アイテムや建物を作って楽しめるようにする。季節や天候も現実世界を反映させるといい、東京で桜が咲いていれば仮想空間でも桜が咲き、東京で雨が降っていれば仮想空間にも雨が降る――といった形にする。
要求スペックは「Windows Vistaが動く程度のマシン」になる見込みで、一部機能は携帯電話からも利用可能にする予定だ。
Second Lifeの場合、開発元の米Linden Labは土地を提供するだけで、建物やデジタルアイテムなどは原則、すべてユーザーが作っている。meet-me開発を担当するフロムソフトの神直利社長は「Second Lifeのような“オープンソース”は日本人には向いていない」と指摘。建物や空間をあらかじめ作っておくことでユーザーが何をしていいか迷わない作りにするほか、ゲーム内イベントやアトラクションもある程度作っておき、受け身のユーザーも飽きずに楽しめるようにする予定だ。
ユーザーが自由に家を建てたりアイテムを作ったりもできるが、インタフェースはSecond Lifeより「親切に」(神社長)する予定だ。Second Lifeでは、家もアイテムも同じパーツを変形したり、拡大・縮小するなどして組み合わせて作るため、制作には技術と慣れが必要。meet-meではアイテムごとに専用パーツやインタフェースを提供するなどし、初心者でも簡単に作成できるよう配慮する。
性的なコンテンツやカジノ、公序良俗に反するようなコンテンツは排除する。「エロやギャンブルはやらない。単純にユーザーを集めるためだけにそういったものを入れるのはいやだし、そんな場を作っても意味がないと思う」(ココアの森山社長)
産経新聞は、meet-me内で起きた事件などについて取材してmeet-me内外で情報発信したり、イベントの告知を行ったりする。産経新聞取締役で産経デジタル社長の阿部雅美氏は「メタバースは今後、もう1つのネット空間として、現在のインターネットを飲み込む可能性すら持っている。産経の紙媒体やネット事業を通じて、メタバースへの理解・普及の力になれれば」と語った。
プロダクションI.Gとぴえろはそれぞれ、キャラクターデザインやコンテンツ提供などを行う。ぴえろの本間道幸営業本部長は「アニメ制作会社として、キャラクター開発力やライセンス関連のノウハウを提供したい。meet-me内で活躍するアイドル歌手を作ったり、仮想映画館でアニメ映画を上映できるかもしれない」などと展望する。
プロダクションI.Gの石川光久社長は、トランスコスモスと合弁で設立した、ネットビジネスの有限責任事業組合(LLP)「amimo」について触れ、「amimoが運営する『Clappa!』(アニメコミュニティーサイト)は、お客さんもまだまだ来ていなくてイケてないんだけれど、キャラクターが登場するコンテンツを作った瞬間にページビューが月間100万を突破した。キャラクター力は、ネット上でも強い」と指摘。「meet-meは、クリエイターに発表の場を提供できるチャンス」ともとらえているという。
Second Lifeと同様、主な収益は土地販売から得る予定で、同日、企業向けに土地の仮予約受け付けを始めた。ランドマークとなる建物の広告スペースも販売するほか、プロダクションI.Gやぴえろがデザインしたアバターやデジタルアイテムの販売も行う。土地の価格は現実社会と連動するが、「土地の転売でもうけるというようなことはできないようにし、個人に対しても、不公平感がないような価格・システムで提供したい」(森山社長)としている。
仮想世界で流通する通貨の販売も検討するが、仮想通貨の現金への換金は「現行の法制度上黒に近いグレーと考えられるため」(森山社長)当面は行わない。
Second Lifeは、ユーザーが何でも自由に作った結果、アダルト・ギャンブルコンテンツが増えた上、ゲーム内通貨を現金化できることも人気を集める要素の1つになった。meet-meにはこれらがないが、「新しいコミュニケーションの楽しさを提供できる点が魅力」と森山社長は言う。
「例えば、現実社会のお店で靴を見ている時、隣にいる見知らぬ人に『この靴、どう思う?』と話しかけることはなかなかできないが、メタバースなら気軽にできる。現実社会ではあまり起きないこういった新しいコミュニケーションが、ユーザーにも楽しいと思ってもらえるだろう」(森山社長)
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