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紙のような「曲げられる電池」、米研究者が開発

» 2007年08月14日 11時13分 公開
[ITmedia]

 米レンセラール科学技術専門学校(RPI)は8月13日、黒い紙切れのように見える新しいエネルギーストレージを開発したと発表した。

 この電池の90%以上は、新聞紙やノートなどの紙に使われているセルロースでできており、軽くて薄く、柔軟性がある。RPIの研究者は、この紙にカーボンナノチューブを配置し(黒く見えるのはこのため)、これらのナノチューブが電極の役割を果たす。

 この電池は紙のように柔軟なため、機能や効率を損なわずに丸めたり、曲げたり、折ったり、いろいろな形に切ったりできる。重ねれば全体的な出力を高めることも可能だ。電解質には水を含まないイオン液体を使っているため、凍結や蒸発はなく、最高でカ氏300度(セ氏149度)、最低でカ氏マイナス100度(セ氏マイナス73度)まで耐えられる。

 またこの装置はリチウムイオンバッテリーとスーパーキャパシタの両方の機能を持ち、従来の電池に匹敵する長時間の安定した出力と、スーパーキャパシタのような迅速なエネルギー放出を実現するという。

 RPIは、この電池は軽量なため、小型の携帯機器のほか輸送車両にも適していると述べている。有害な化学薬品を使っていないため環境に優しく、人体埋め込み型の医療機器にも利用できる可能性があるとしている。研究チームは、電解質を加えていない電池を用意し、人間の汗や血液、尿で自然に生じる電解質を使ってこれを動かせることを示した。

 この電池は紙のように印刷することができ、材料も安価という。まだ量産の方法は開発されていないが、研究者らは最終的な目標として、新聞を印刷するような方法でこの紙電池を印刷することを目指している。

 このプロジェクトの詳細は、8月13日に発行された「Proceedings of the National Academy of Sciences」の「Flexible Energy Storage Devices Based on Nanocomposite Paper」という論文で詳説されている。

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