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Second Life「企業が続々参入」の舞台裏業界人が告白(2/3 ページ)

» 2007年08月23日 15時13分 公開
[岡田有花ITmedia]

 世界の同時接続ユーザー数は常時3万前後と総アクティブアバターの5%程度だから、日本人アバターの同時接続数は推計約1300人。常時数万人が接続する人気MMORPGと比べても人口は極端に少ない。加えてSecond Lifeには、1つのSIM(島)に入れる人数が50人程度という極端な制約もある。マスを対象にした大規模なプロモーションはそもそも難しい。

 それを知った上でも、プロモーションに活用してみたいという企業は多いという。「企業SIMへの来訪者数だけがすべてじゃない」。背景には、企業の広告戦略の迷いと、3次元インターネットという“次世代”にキャッチアップしておきたいという思いがある。

Web広告は「新しいもの」が熱望されている

 テレビCMなど既存媒体の広告効果が低下し、「広告が効かなくなっている」と言われる今、どんな広告なら効果があるのか――企業は迷いながら、新しい媒体であるWebに大きな期待を寄せているという。

 「広告はそもそも、効果測定が難しい。『この広告で売れた』とはっきり分かる場合を除くと、CMが流れた回数やバナーのクリック回数、宣伝の話題性などが購買にどう結びついたかとらえるのは困難だ」

 「何が効果的か分からない中、それでも何かやらなくてはいけない宣伝部は、常に霧の中を歩いているようなもの。だから広告の現場では、『これをやるべきだ』というコンセンサスや、『やってよかった』という納得感こそが、前に進んでいくために重要になる」

 「コンセンサスや納得感を求める中で“新しいこと”が何となく力を持つ。広告担当部署は新しいことを切実に求め、『新しいことをやれ』と上からも言われる。そういう状況でたいてい、Webというキーワードが浮上してくる」

 新しいことへの期待を一手に引き受けるWeb広告業界では、定期的に新手法の“熱病”が広がるという。「Second Lifeの前はmixiコミュニティーやブログを使ったバイラル広告、その前はWebシネマ……それこそバナーより効果が薄いんじゃないかと思うような手法にさえ注目が集まり、企業がこぞって投資する。“広告”という霧の中を歩く不安な気持ちから」

 「経済紙でも話題の新しい手法」というだけでコンセンサスを得やすく、広告予算を通しやすい。新しいことにチャレンジすれば先進的な企業というイメージもアピールできるし、メディアに報道されればパブリシティ効果も期待できる。

 Second Lifeに1つのSIMを作成する際の予算は1000万円前後といい、「Flashばりばりの本格的なプロモーションサイト10ページ分程度」。どうせ効果が分からないなら、プロモーションサイトという旧来の手段より、新しいことにチャレンジしたいというのが宣伝担当者の人情だ。

 「実際にリーチできた人数は分からなくても、話題になって経済紙などに取り上げられれば費用対効果も十分。新しいことができた、広告を出してよかった、という納得感につながる」

 新しい場に出せば、これまでとは接点の違うユーザー層にもリーチできるという面もある。「場合によっては、バナーで1000人の目に一瞬留まるよりも、Second Lifeを利用している、ITに詳しく情報波及力のある10人に深い体験をしてもらった方がいい、という考え方もある」

“3D広告の実験場”も

 企業SIMは、1日コンスタントに数十人訪れれば成功。数百人も訪れれば大成功で、「Second Lifeは人がいないと聞いていたのに意外とたくさん来てくれるじゃないか。これなら上に説明できる」と担当者も安心するという。「支店を全国展開している大企業のフランチャイズで、1日当たり100人も来ないようなリアル店舗は実際にある。バーチャルリアリティー空間で1日100人、200人来れば、すごいと言える」

 「来訪者数だけがすべてじゃない」――Second Lifeには、3次元仮想空間マーケティングの“実験場”という意味もある。ネット上で3次元空間が当たり前になる未来を前に、Second Lifeを使ってマーケティングを試しておきたいという企業は多い。

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