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「コスプレ生活、応援したい」――専門フリーマガジン「CosPick」創刊

» 2007年09月14日 20時51分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 CosPick創刊号

 コスプレイベントが増えている。1カ月間に全国で行われるイベント総数は100以上ともいわれるが、そのほとんどが個人主催の小さなイベント。告知は口コミや個人ブログ、SNSなどが精一杯で、多くの人に来てもらうのも難しい。

 コスプレイヤー向け隔月刊無料誌「CosPick」は、そんなイベントを活性化したいという思いから生まれた。8月17日に発行した創刊号には、全国約80のイベント情報を掲載。宿泊施設やイベント後の飲み会「アフター」向け店舗などの情報を提供する。キャッチフレーズは「キミのコスプレ生活応援マガジン」だ。

 創刊は1つの賭け。「ニーズがあるかどうか不安だった」と、CosPick事務局で、千代田区内でアキバ系ビジネスを展開するベンチャー企業・クロスブリッジの吉岡有一郎社長は言う。だが「コミックマーケット72」(8月17日〜19日)で手渡しした創刊号は、3日間で6500部を配り、ニーズを証明してみせた。

コスプレイヤー目線で編集

 創刊号はA5オールカラーで表紙込み20ページ。「コミックマーケット」「となりでコスプレ博」など都内の大きなイベントから、札幌市の「HAPPY REVOLUTION」、金沢市の「金沢コスプレファイアー」、那覇市の「おでかけライブ in 沖縄」──といった地方イベントのスケジュールも掲載する。全国を網羅したつもりだが、「まだまだあるだろう」と同社の杉森浩一さんは言う。

画像 全国各地のイベント情報が並ぶ。情報は、コスプレイベントに足を運んで次回の開催を聞いたり、コスプレイベント主催団体に問い合わせたり、イベント企業に計画を聞いたり、ネットで検索したり――手を尽くして集めている

 同誌のターゲットは、コスプレイヤーの中心となっている10〜20代の女性。「コスプレという趣味をちょっと恥ずかしい」と思っているという彼女らに利用しやすいよう、徹底的にユーザー目線で編集した。

 表紙は、コスプレ誌によくあるコスプレイヤーの写真ではなく、イラストにすることで電車の中で読んでも恥ずかしくないように配慮。「ホットペッパー」のクーポンのようにイベントごとに切り取り線を入れ、財布に入れられるようにした。

 体裁は中とじとし、真ん中のページにイベントカレンダーを配置。簡単に抜き取って持ち歩ける。「どんなものも、使う人の意見がないとすたれてしまうから」と吉岡社長は話す。

衣装に急なピンチ! のために「会場近くの100均情報」も

画像 携帯電話サイトでは会場別検索もできる。「最近は『この会場のこの場所の雰囲気が好きだから』と、会場ごとにイベントを探す人も増えていると聞き、メニューに入れた」(杉森さん)

 イベントごとにQRコードを掲載し、携帯電話用サイトでイベントのアップデート情報や、会場への地図、宿泊施設情報の検索もできるようにした。会場周辺のコンビニや100円均一ショップの情報も掲載。「コスプレ衣装が急に破れたりしたとき、裁縫道具やマジックテープなどを購入できる100円ショップのニーズが高いと聞いたので」(杉森さん)

 「アフター」と呼ばれるイベント後の食事や交流向けに、居酒屋やカラオケ店の情報も広告として掲載した。「コスプレOK」「個室あり」「突発大人数」など、コスプレイヤーのニーズに合った店を紹介している。

 「コスプレイヤーはアニメの話で盛り上がる。個室なら周囲に聞かれて恥ずかしい思いをせずに済む。また、初対面のコスプレイヤーが集まり、1つの作品のコスプレユニットを作る『合わせ』を行い、そのまま大人数でアフターに流れる際、6人以上で予約なしでも利用できる『突発大人数』OKの店を活用してもらえれば」(杉森さん)

「地方でコスプレツアー」という夢

画像 宿泊施設情報も

 コスプレに理解ある宿泊施設の情報も、広告として掲載した。都内のイベントに「遠征」してくるコスプレイヤーに情報提供すると同時に、地方の活性化にもつなげたいという野望もある。

 「地方では使われずに遊んでいる大きな施設がたくさんある。そういった“ハコモノ”をコスプレ会場として誘致し、その地域の宿も確保してツアーを組めないか、ということを考えている」(杉森さん)

 付き合いのある旅館から「全国で宿泊施設が苦戦している」という話を聞いていた。コスプレイヤーの「雰囲気のある会場でイベントをしたい」というニーズと、地方で苦戦する宿泊施設や箱モノを組み合わせることができれば――夢はふくらむ。

アキバのこだわり、応援したい

 「市場があるかどうかは、よく分からなかった」(吉岡社長)――無料のコスプレ情報誌創刊は1つの賭けだった。だが創刊号は大好評。1万部発行したうち、夏コミの3日間で6500部を配った。「こういうのが欲しかった」と言ってくれるコスプレイヤーも多かったという。

 コスプレイベント会場やショップなど50カ所以上で配布する。売り上げはコスプレグッズショップや、宿泊施設などの広告掲載で得て運営していく。創刊号の収支はトントンだ。

 「オールカラーでコストもかかっており、今のところ収支は苦しいが、コスプレイヤーさんからお金をもらわなくても、ビジネスにする仕組みは努力して考える。できそうな手応えは感じている」(吉岡社長)

 第2号は9月28日発行予定。1万部の配布を予定している。

 吉岡社長はエニックス(当時)を退社し、「アキバのコンテンツに特化したビジネスをしたい」と起業。秋葉原の情報を動画で更新するサイト「Akiba.tv」などを展開してきた。

 「アキバは今“メイドの街”というイメージが付いているが、それは一要素でしかない。独自のこだわりを持った文化は、コスプレのように10も20もある。こだわっている人たちを応援していきたい」(吉岡社長)

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