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PS3の目玉「ガンダム無双」がPS2に 旧世代機に移植の「なぜ」

» 2008年01月10日 08時10分 公開
[西川留美,ITmedia]

 バンダイナムコゲームスは、昨年3月に発売したプレイステーション 3(PS3)向けソフト「ガンダム無双」を、プレイステーション 2(PS2)向けにアレンジし、「ガンダム無双 Special」として2月28日に発売する。新世代機向けに発売したゲームソフトが、一定以上の期間を経て旧世代機向けに焼き直して発売されるというのは、きわめて異例だ。


画像 PS3向け「ガンダム無双」
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 一般的に、新世代機のソフトを旧世代機に移植しないのは、グラフィックの質などを大幅に落とさなくてはならないためだ。PS2版ガンダム無双のグラフィックスはPS3向けより粗くなり、コーエーがPS2向けに出してきた無双シリーズと近いものになるようだ。

 グラフィックに目をつぶってでも新世代機・旧世代機双方で出す――というケースでよくあるのは、海外ゲームメーカーが映画コンテンツを題材にしたタイトルを発売する場合。これは版権を大枚はたいて買い取っているため、あらゆるハードで発売してマルチプラットフォーム展開し、一気に投資回収する必要があるためだ。

 だがガンダムの版権者はバンダイナムコグループ。今回のケースはそれには当たらない。ではなぜなのか。

PS3向けだけでは投資回収できない?

 ガンダム無双は、バンダイナムコの「機動戦士ガンダム」シリーズと、コーエーの「無双」シリーズというヒットブランドのコラボレーションで誕生したアクションゲーム。昨年3月のPS3版発売直前、当時ソニー・コンピュータエンタテインメント会長だった久夛良木健氏が「早くもPS3ソフトの第2世代が登場したのでは」と期待を込めたように、ソフト不足が指摘されていたPS3の目玉タイトルだった。だが──

 「ガンダム無双の売上本数は30万本程度と、思っていたほど伸びなかった。コーエーは開発に回っていたし、リスクを負っているのはバンダイナムコの方だろう。利益面ではよほど厳しい状況なのか」と業界関係者は声を落とす。

 PS3の世界累計販売数は、07年9月末時点で559万台(国内は07年12月末時点で167万台:エンターブレイン調べ)。一方、PS2の世界累計販売数は07年9月末までで1億2000万台を突破しており、どちらのハード向けに販売した方が多くのソフトを売ることができるかは、火を見るよりも明らかだ。PS3向けに作ったソフトをわざわざ作り直し、年度末に間に合う2月に発売するというのは、高い開発費に見合う利益を回収するための策と取られても仕方がない。

 では実際のところどうなのか。事の真相を確かめるべく、バンダイナムコゲームスにコメントを求めた。

 「売り上げ状況による経営判断ではありません。あくまでもこの商品に関してそうしたニーズが高く、今回の発売に至りました。感覚としては、PS向けに出したソフトをPSPに移植するのと近いものがあります」(同社広報担当者)。グラフィックの質が落ちても構わないからPS2で楽しみたいというユーザーが多かった――ということのようだ。

 ただ「PS3向けに出した製品をPS2にどんどん出していくという方向では決してない」とも担当者は付け加える。グラフィック面でPS3に勝るゲーム機は他にないとはいえ、「待っていればいずれどのゲームも家にあるPS2でプレイできる」となると、PS3向けソフトを買うユーザーはいっそう減ってしまうことになるだろう。

 ハリウッドの支持を得てBlu-ray Discが波に乗り始め、ようやくPS3の活路が見えたばかりだ。サードパーティ各社は、いまだに特定のハードに集中して開発することができずに悩んでいる。PS3向けソフトのPS2移植は、PS3が普及するかどうかを見極めるための時間稼ぎなのかもしれない。

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