「義経サマ萌え」「義経サマって弁慶と衆道?(←妄想)」と腐女子が語り、「ちょwww加藤に福島www豊臣こっちwww頭悪すぎwwwwwwww」と「関ヶ原の合戦実況スレ」で盛り上がり、「うちのワンコは日本一」というブログを徳川綱吉が書く。書籍「歴史Web」(日本文芸社、1260円)は、2000年前からインターネットがあったら、という想定で、「さながら現代のシュリーマンのようにキャッシュの山を探し出し、修復し、収録した本」だ。
「歴史上の人物だって、現代のわたしたちと同じように、玉の輿に乗りたい、金もうけしたいと思っていたんです」――著者で、書籍「『超』日本史」などで知られる藤井青銅さんは、歴史Webを通じて歴史を身近に、人間的に感じてほしいと話す。
「ネットは調べ物をするときに使うくらい」という程度のライトユーザーの藤井さん。ネット文化や2ちゃんねるにもうとかったが、「電車男」のまとめサイトや2ちゃんねるの腐女子スレを参考に猛勉強したという。
「サイトを見て、どのポイントを押さえればそれっぽくなるか考えました。変えていいところとだめなところはどこかや、書き込みの共通パターンは――と勉強しました。本を発表したら、2ちゃんねるのユーザーから批判を受けるかと心配していたけど、あまりなかったので安心しています」
アイデアを思いついたのは3年前。「清少納言のブログ」「徳川幕府のWebサイト」「関が原の合戦の実況スレ」と3パターンを試作した。「各パターンをとっかえひっかえ紹介する本を作ったら面白いだろうと編集者と盛り上がったんですが、編集作業が大変で……」
例えば紫式部のブログを企画するという場合。人生のどこを切り取って紹介するのか、ブログにコメントを残しそうな人物は誰か、リンクがあるとしたらどんなページか――ひとつひとつ調べて制作した。
「歴史辞典を見ても、1つの項目にはその人のことしか載っていません。どんな人物と関係があったのか、時代背景はどんな感じか調べるのが大変で、気づいたら本の完成までに3年も経っていました」
本で紹介するサイトやブログのデザインも、試行錯誤を繰り返した。邪馬台国や幕府のオフィシャルサイトは、地方自治体のサイトのイメージだ。「Webデザイナーに頼んだら今っぽくなりすぎちゃって。もっとダサくしてと注文を付けたこともありました」
表記にもこだわった。時代に合わせて数字を漢数字で記載したり、漢字表記をカタカナやアルファベットに変えた。「歴史事実にはできるだけ忠実に、まじめに作ったほうが面白い」
藤井さんお気に入りのページは、菅原道真のブログ「大宰府便り」と、徳川家康の幼少期のブログ「竹千代日記」だ。
大宰府便りの最近の記事タイトルは全て「みやこ」。自己紹介欄には、好きな言葉「みやこ」、趣味「みやこ」、無人島に1つだけ持っていくとしたら「みやこ」とあり、都が恋しい様子が伝わってくる。竹千代日記は、「ものごころついたときからずっとひとじちです。かんたんに人をしんじないぞ。しんぼう、しんぼう」と書かれている。
「この2つは泣けるページなんです!」
「歴史のWikipedia」を作りたい――目指すは歴史Webのネット展開だ。歴史Webを参考に、ユーザーに歴史上の出来事や人物のページを作ってもらい、つなげられればと考えている。
読者からは「本で紹介しているページはどこにあるのか」「ネット上に続きのページがあれば読みたい」と問い合わせもあったという。
「本で紹介したようなWebページを本当に作って公開したい、という思いがこみ上げてきました。実現したら、比叡山のお寺とか、何百年も前に創業した老舗(しにせ)が広告出してくれるかな」
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