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「世界トップへ」「日本の液晶産業の強化」 ソニーとシャープ、液晶を共同生産

» 2008年02月26日 22時45分 公開
[ITmedia]

 ソニーとシャープは2月26日、テレビ用の液晶パネル・モジュールを生産する合弁会社を設立することで合意したと発表した。シャープが大阪・堺市に建設中の最新工場を分社化し、ソニーが出資する形をとる。韓国Samsung Electronicsとの合弁会社以外に調達先を広げたいソニーと、巨額の投資負担軽減と工場の安定稼働を図りたいシャープの思惑が一致した。

 テレビ用液晶分野では、シャープが東芝へのパネル供給などで提携。松下電器産業は日立製作所子会社を買収し、3000億円を投じて新パネル工場を建設すると発表し、国内主力メーカーは松下とシャープの2社に絞られている。

photo 都内で記者会見したソニーの中鉢社長(左)とシャープの片山社長

 2009年4月に、テレビ用液晶パネル・モジュールを生産・販売する新会社を設立。資本金は未定だが、シャープが66%、ソニーが34%を出資し、投資額も同割合で負担する。投資額はシャープが公表済みの総投資額3800億円から「土地取得代を除き、モジュール工場分を加えた額」(片山幹雄社長)で、現時点では未定としている。

 新工場は第10世代と呼ばれる大型ガラス基板に対応した最新鋭の設備を備える。09年度中に稼働を開始する予定で、生産能力は稼働当初で3万6000枚/月(ガラス基板換算)、後に2倍に拡大する計画だ。新会社は製造したパネル・モジュールを、出資・投資割合に応じてシャープとソニーに供給する。

 ソニーは新工場から「ボリュームゾーンの40インチをメイン」(中鉢社長)に調達する計画。ソニーの07年市場シェアは13.9%で、Samsungに次ぐ2位。2007年度の液晶テレビ販売目標として掲げた1000万台は達成できる見通しで、08年度は世界シェア15〜20%を目指す。

 Samsungとの折半出資で04年に始めた「S-LCD」は、今後も「何ら変更なく共同経営を続ける」(中鉢社長)。S-LCDと新工場をそれぞれ基幹供給源と位置付け、需要の急拡大にも対応できる調達先を確保し、Samsungを上回り世界シェアトップを目指す。

 シャープは投資負担を軽減できる上、「液晶テレビトップメーカーのソニーと運用することで、新工場の安定操業が可能になる」(片山社長)というメリットもある。片山社長は新会社に他社が合流する可能性は否定し、「他社を募ることはしない。2社でやる」と明言した。

世界トップのために

 片山社長は「液晶テレビで世界トップメーカーのソニーが新工場のメンバーに加わり、飛躍的なイノベーションが起きると確信している。品質やコスト競争力が向上できる上、部材メーカーなども強化でき、日本の液晶産業そのものの強化になる」とソニーの合流を歓迎。「液晶メーカーとして世界ナンバーワンを目指す。テレビメーカーとしてもトップメーカーとして認められるよう努力していく」と話した。

 中鉢社長は「ソニーのエレクトロニクス成長の最大のカギは液晶テレビ。サプライチェーンやパネルの安定調達は最重要課題だ」と話し、新工場への参加は「名実ともに世界一のテレビメーカーを目指す上で非常に重要なステップ」と強調した。

 片山社長によると、提携交渉は昨年秋ごろにスタート。「シャープはパートナーがほしかった。トップ同士で会う機会があり、話し合った」という。

 パネル生産では協力するものの、最終製品の市場では「BRAVIA」「AQUOS」の2大ブランドで激突するライバルでもある。片山社長は「ソニーブランドと同じ土俵で戦うのは厳しい。AQUOSは今まで以上に高性能化で努力していきたい」と気を引き締めていた。

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